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羊と亀のお遊戯会
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奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
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映え無し
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ああ〜もう、めっちゃ良かった……!これ、第71話なんだね。最初の短歌からもう刺さってたけど、この“恋愛予定になってなかった”系、私のツボ直撃だわ。 悠人が「明日の自分に任せるのも立派な計画」って言うシーン、超好き。計画オタクな私もグサリときた(笑)。それと、手帳の余白に「悠人に会う」って書いてから照れちゃう主人公、可愛すぎるでしょ。予定になかった存在が知らぬ間に一番になる流れ、自然でリアルだった。
【短歌】
予定にはなかった君がいつの間に心の中の一番になる
【短歌をテーマにした物語】
私の人生設計に、恋愛という項目はなかった。
少なくとも、大学に入るまでは。
高校三年生の春、私は進路希望調査の用紙に、迷いなく第一志望の大学名を書いた。
将来やりたい仕事がある。勉強したいこともある。大学に入ったら資格の勉強をして、アルバイトをして、長期休暇には旅行にも行きたい。
やりたいことは、いくらでもあった。
恋人が欲しいと思ったことがないわけではないけれど、今すぐ必要だとは思わなかった。
誰かを好きになって、相手のことで悩んだり、連絡を待ったり、会えない時間を寂しがったり。
そんなことに時間を使うより、自分の目標に向かって進むほうが、私には合っていると思っていた。
だから、大学に入学して最初のオリエンテーションで、隣の席になった彼のことも、特に気に留めていなかった。
「その資料、後ろのページもあるよ」
彼は私が配布資料をめくるのを見て、そう教えてくれた。
「あ、本当だ。ありがとう」
「どういたしまして」
それだけの会話だった。
彼の名前は、佐伯悠人。
同じ学部で、同じ講義をいくつか受けている。
最初はそれだけの関係だった。
*
悠人と話すようになったのは、入学して一か月ほど経った頃だった。
きっかけは、講義の課題だった。
グループで発表することになり、偶然同じ班になったのだ。
「この資料、もう少し整理したほうがわかりやすいかな」
私がパソコンの画面を見せると、悠人は椅子を寄せてきた。
「うん。でも、ここの説明は今のままでもいいと思う。わかりやすいし」
「そう?」
「うん。ちゃんと考えて作ってるのが伝わるよ」
思いがけない言葉だった。
私は昔から、真面目だと言われることが多かった。
けれど、真面目すぎるとか、もっと適当でいいのにとか、そんなふうに言われることもあった。
頑張っていることを、そのまま認めてもらえるのは、少し嬉しかった。
「ありがとう。じゃあ、ここは残しておこうかな」
「そうしよう」
悠人は笑った。
それから、私たちは課題の相談をするようになった。
講義が終わったあとに一緒に図書館へ行くこともあったし、学食で昼食を食べることもあった。
悠人は、私とは少し違う人だった。
私は先の予定を決めてから行動するタイプだけれど、彼はその日の気分で行き先を変える。
私は失敗しないように何度も確認するけれど、彼は失敗しても「次は気をつけよう」と笑っている。
初めは、ずいぶん気楽な人だと思った。
けれど、一緒にいるうちに、その気楽さに何度も救われた。
試験前に勉強が思うように進まず、焦っていたとき。
「全部完璧にしなくてもいいんじゃない?」
悠人は、私のノートをのぞき込みながら言った。
「でも、できるだけいい成績を取りたいし」
「うん。それはわかる。でも、ちゃんと頑張ってるじゃん。今日はもう帰って寝ようよ」
「まだ終わってないよ」
「明日の自分に任せるのも、立派な計画だと思うけど」
あまりにも堂々と言うので、私は思わず笑ってしまった。
「何それ」
「俺、いいこと言ったと思ったんだけどな」
「自分で言わないでよ」
二人で笑った。
その帰り道、私は思った。
悠人といると、予定どおりにいかないことも、悪くない。
*
夏休みが近づいた頃、私は自分の変化に気づき始めた。
朝、大学へ向かう電車の中で、今日の講義を確認する。
そのあと、無意識に悠人の時間割を思い出す。
今日は同じ講義がある。
昼休みは、学食に行くだろうか。
昨日貸した本は、もう読み終わっただろうか。
考えてから、私は慌ててスマートフォンをしまった。
何をしているんだろう。
別に、悠人に会えなくても困らない。
課題だって一人でできるし、昼食だって一人で食べられる。
連絡が来なくても、何か問題があるわけではない。
それなのに、彼のことを考えてしまう。
大学に着いて、彼の姿を見つけると、ほっとする。
講義中に目が合うと、少し嬉しい。
帰り際に「また明日」と言われると、明日が楽しみになる。
私はそれらの気持ちを、しばらく見ないふりをしていた。
だって、恋愛なんて予定になかったのだから。
今は勉強を頑張りたい。
やりたいことだって、たくさんある。
誰かを好きになってしまったら、きっといろいろなことが変わってしまう。
そんなふうに考えていた。
けれど、ある日の夕方。
図書館で一緒に課題をしていた悠人が、ふと顔を上げた。
「そういえば、来週の土曜日って空いてる?」
「土曜日?」
「うん。駅前に新しい本屋ができるんだって。ちょっと面白そうだから、行ってみない?」
私は手元のノートを見つめた。
来週の土曜日。
確か、午前中に課題を進めて、午後は資格の勉強をする予定だった。
予定表を確認しようとして、やめた。
「……うん。空いてるよ」
「よかった。じゃあ、一緒に行こう」
悠人は嬉しそうに笑った。
その顔を見た瞬間、私は自分が何をしたのか理解した。
予定を変えたのだ。
自分のために決めていた時間を、彼と過ごすために使おうとしている。
しかも、嫌だとは思わなかった。
むしろ、楽しみだった。
*
土曜日、私は待ち合わせ場所に十分早く着いた。
いつもより少しだけ服を選ぶのに時間がかかった。
髪型を整え、鏡を見て、鞄の中身を確認する。
普段の私なら、こんなことに時間をかけるくらいなら、少しでも勉強を進めようと思うだろう。
けれど今日は、違った。
「お待たせ!」
悠人が手を振りながらやってきた。
「ううん。私も今来たところ」
「じゃあ、行こうか」
新しい本屋は、想像していたよりも広かった。
私たちはそれぞれ好きな棚を見て回り、気になった本を紹介し合った。
悠人が勧めてくれた小説は、普段の私なら手に取らないようなジャンルだった。
「こういうの読むんだ?」
「うん。たまには違うものも面白いよ」
「じゃあ、読んでみようかな」
「読み終わったら感想聞かせて」
彼はそう言って笑った。
本屋を出たあと、私たちは近くのカフェで休憩した。
学校の話、好きな本の話、将来の話。
気がつけば、外は夕暮れになっていた。
「もうこんな時間か」
悠人が時計を見て言った。
「ほんとだ」
「楽しいと、あっという間だね」
その言葉に、私は胸の奥が温かくなるのを感じた。
楽しかった。
ただ本屋へ行って、お茶を飲んで、話をしただけ。
特別なことなんて何もなかった。
それなのに、今日という一日を、私はきっと忘れない。
駅まで歩く途中、悠人が言った。
「また、どこか行こうよ」
「うん。行きたい」
返事は、考えるより先に出ていた。
彼は笑った。
その笑顔を見ながら、私はようやく認めた。
私は、悠人が好きなのだ。
会いたいと思う。
話したいと思う。
一緒にいると嬉しいし、別れると少し寂しい。
彼が楽しそうにしていると、自分まで幸せな気持ちになる。
もう、友達だからという理由だけでは説明できなかった。
*
帰宅してから、私は机に向かった。
いつものように、翌週の予定を手帳に書き込む。
講義、課題、資格の勉強、アルバイト。
以前と同じように、やるべきことはたくさんある。
けれど、手帳を見つめていると、自然に思い出す。
来週は、悠人に借りた本を返そう。
次の金曜日は、講義のあとに一緒に昼食を食べられるだろうか。
今度は、私からどこかへ誘ってみようかな。
気がつけば、予定の中に彼がいた。
最初から決めていたわけではない。
彼と出会うことも、一緒に過ごすことも、好きになることさえも。
私の人生設計には、なかったはずなのに。
それでも今は、彼がいる未来を考えるのが楽しい。
私は手帳の余白に、小さく書き込んだ。
――悠人に会う。
書いてから、少し恥ずかしくなって笑った。
たったそれだけの予定なのに、胸が弾む。
人生は、予定どおりに進むとは限らない。
時には思いがけない出会いがあって、知らなかった景色を見せてくれる。
そして、気づかないうちに、その人が心の中で大切な場所を占めるようになる。
恋愛なんて、予定になかった。
誰かを好きになるつもりもなかった。
けれど、今の私は思う。
予定にないことが起きるからこそ、人生は面白いのかもしれない。
手帳を閉じる前に、私はもう一度、余白の文字を見た。
予定にはなかった君が、いつの間にか、心の中の一番になっていた。