孫悟飯「来たな、17号!」
17号「まだ居やがったか、孫悟飯。お前もしつこい奴だ。師匠との約束を守れなかったことで、敗北を認め、来なくなったのを確認するつもりで来たんだが」
孫悟飯「それとこれとは関係ない!」
17号「まさかお前、約束を破ったこと、師匠に隠してるんじゃないだろうなぁ?」
孫悟飯「うっ。そう……僕は……心の弱さから、バレなきゃいいと思って、隠し通そうと考えてしまった。でもあの時の戦い、実は師匠に見られていたんだ」
声を絞り出すかのような悟飯。その声音は、自責の念や後悔など、内に秘めた感情を表すには十分だった。
17号「ハーッハッハ! あまりに惨めだな孫悟飯よ。そんな奴と対峙しているのかと思うと、俺は恥ずかしいぞ」
孫悟飯「クッ……敵ながら正論だ」
17号「それで、その後は?」
孫悟飯「破門にされてしまった……」
自信なさげに、小声で喋る悟飯。
とはいえ聞こえていた17号だが、意地悪な笑みを浮かべながら聞き返す。
17号「今なんて?」
孫悟飯「僕はっ! 鶴仙流を破門になったっ!」
17号「アーッハッハ! 本当に、からかいがいだけはあるなお前。でも、もうそれにさえ飽きたんだわ。今日で会うの終わりにしてもらえるか?」
孫悟飯「できる訳ないだろ! そんなことをしたら、お前は別の街を破壊しに……」
17号「はぁ。お前って、ほんと呑気だな。俺は組織に属していると言ったはずだ。つまりメンツは俺だけじゃないわけ。俺とお前がドンパチやってる間に、別の仲間が占領してんの!」
孫悟飯「そ、そんな……」
17号「だからもう、お前にも俺にも、ここで戦う理由はないわけ!」
17号(クックック。これで孫悟飯との縁も切れる。後はパラクエでもして平穏に……)
孫悟飯「分かった。そうしよう。でも最後に一勝負、お願いしたい!」
17号「はぁ。昨日負けたばっかで、いきなり戦況が好転するわけないだろ。往生際が悪いぞ」
孫悟飯「分かってるさ。ハンデを背負った状態なら、君に勝てる見込みがない事くらい。でも破門になった今、本気を出せることでワンチャンあるかも知れない!」
悟飯が気を集中させると、派手な髪色は、出会った当初の黒に戻っていった。
見た目だけで言えば、髪が逆立ったままであること以外、変身と呼ぶには程遠い状態である。
しかし、怒りに身を任せていただけの今までとは、全く異なる色の気に満ち溢れているのが、明白であった。
17号(ちょまー! えぇーーーっ! なんか俺、いきなりピンチになってるんですけどー! ど、どうする俺? 考えろ……考えるんだ!」
孫悟飯「これが、アルティメット状態。いきなり消耗の激しいビーストは危険だから、この状態から戦わせてもらう」
17号「孫悟飯よ……」
孫悟飯「ん、なんだ? あ、そうだ。当然だけど君の方も、全てのハンデを解いてくれて構わない」
孫悟飯「約10万本の髪を攻撃に使用でき、自分から攻撃しない択も選べるようになった君の強さは、計り知れないけど」
17号「そんな事はどうでもいい! 貴様、気付かないのか? 己の醜さに!」
孫悟飯「えっ? それはどういう……」
17号「お前、師匠のこと、心から尊敬してたんだろ!? だったら守れよ! 破門されたくらいで、師匠との約束、破んなよ!」
孫悟飯「うっ! そ、それは……」
17号「めげんなよ! 貫けよ! いつでも顔向けできる状態で、あり続けろよっ!! そういうことだ。じゃ、俺はこれで」
孫悟飯「待てっ! 17号!」
17号「ビクーーーッ! ま、まだ何か?」
孫悟飯「ありがとう。君のおかげで目が覚めたよ。僕はもう、鶴仙流のみんなに会いに行くことは叶わないけど、これからも師匠との約束を守っていくよ!」
17号「フン。せいぜい精進することだな」
孫悟飯「それと、いつか君より強いであろう組織のボスも倒せるようになって、説得してみせる! 君はもう来なくていいけど、僕はここで修行を続けるよ」
17号「勝手にしろ。あばよ」
内心ヒヤヒヤしながらも、キザに立ち去る17号なのであった。
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