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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第28話 〚予知に頼らない方法〛(澪&玲央)
夕方の風が、少しだけ涼しくなってきていた。
校門を出たところで、私は足を止める。
「……玲央、少し話せる?」
名前を呼ぶと、前を歩いていた相馬玲央が振り返った。
海翔は少し離れた位置で、私たちの様子を静かに見ている。
「いいよ。何?」
私は深呼吸してから、言葉を選んだ。
「予知に頼らずに、未来を避ける方法……考えたい」
玲央の目が、ほんの少しだけ鋭くなる。
冗談じゃないと、すぐに伝わったのだと思う。
「最近、見えてない未来があるんだろ?」
図星だった。
私は小さく頷く。
「見えないのが怖い。
でも……見えないからって、何もしないのはもっと怖い」
玲央は腕を組み、少し考え込んだ。
「じゃあさ、逆に考えよう」
「逆?」
「未来を見るんじゃなくて、
“今”を増やす」
私は首をかしげる。
「どういうこと?」
玲央は歩きながら説明を始めた。
「恒一が動けるのって、澪が一人の時とか、孤立してる時だろ。
だったら——一人になる時間を減らす」
「……!」
「それに、動きが読まれないようにする。
毎日同じ帰り道、同じ時間、同じ行動。
それが一番、利用されやすい」
その言葉に、胸が少しざわついた。
——確かに。
予知で避けてきたから、
“行動そのもの”を変える発想がなかった。
「予知は保険だよ」
玲央は真剣な顔で言う。
「使わなくていいなら、それが一番いい」
少し後ろで聞いていた海翔が、近づいてくる。
「俺も同じこと考えてた」
玲央を見る。
「澪が全部一人で抱えるの、もう限界だと思う」
私は、思わず視線を落とした。
「……迷惑じゃない?」
「全然」
海翔は即答した。
「むしろ、頼ってくれた方がいい」
その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなる。
「だからさ」
玲央が続ける。
「ルールを作ろう」
「ルール?」
「一人で行動しない。
違和感があったら、即共有。
予知が来なくても、来たら来たで隠さない」
私は、ゆっくり頷いた。
「……うん」
その瞬間。
心臓が、きゅっと鳴った。
でも——
未来の映像は流れない。
ただ、感情だけが伝わってくる。
——“選択は、間違っていない”。
(これが……新しい形?)
私は胸に手を当てる。
予知じゃない。
でも、確かな直感。
「澪?」
「大丈夫」
私は顔を上げて、二人を見た。
「……ちょっと、分かった気がする」
守られるだけじゃない。
見える未来に怯えるだけでもない。
自分で動いて、
周りと繋がって、
未来を“作り替える”。
それが、
予知に頼らない方法。
その頃——
校舎の影で、
恒一はスマホを握りしめていた。
澪の行動が、
以前より複雑になっている。
一人になるはずの時間に、
必ず誰かがいる。
(……おかしい)
予知の存在を知らないはずの彼にとって、
この変化は説明がつかない。
計算が、合わなくなってきている。
そしてそれは、
確実に彼を焦らせ始めていた。
——未来は、
静かに、でも確実に分岐していく。