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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第29話 〚守る側の連携〛(海翔&仲間たち)
放課後の教室は、いつもより静かだった。
机を元に戻す音だけが、やけに大きく聞こえる。
澪が玲央と先に帰ったのを確認してから、
俺——橘海翔は、席に残った。
「……集まってくれる?」
小さく声をかけると、
えま、しおり、みさと、そして玲央が戻ってくる。
自然に輪ができた。
「澪のことだよね」
しおりが、先に口を開いた。
俺は頷く。
「最近、予知が来ない時があるらしい」
その言葉に、空気が少し引き締まった。
「それって……危ないってこと?」
みさとが不安そうに言う。
「うん。でも同時に」
玲央が続ける。
「予知に頼らない動き方を、澪が考え始めてる」
えまが腕を組んだ。
「つまり、私たちの出番ってことね」
その言葉に、少しだけ救われた気がした。
俺は机に手を置き、全員を見回す。
「正直に言う。
俺一人じゃ、全部守りきれない」
言葉にした瞬間、胸が少し痛んだ。
“守る側”を名乗ってきたのに、限界を認めるみたいで。
でも——
「最初から一人でやるつもりだったの?」
えまが即座に言った。
「仲間でしょ」
しおりも頷く。
「澪が何も言わずに我慢してた時、
私たち、気づけなかったの後悔してる」
「今度は、気づいた側が動く番」
みさとが、静かに言った。
玲央がスマホを取り出す。
「じゃあ、具体的に決めよう」
画面を見せながら、淡々と話す。
「登下校は基本、誰かと。
昼休みと放課後、澪が一人になる時間を作らない。
あと、恒一とりあの動きは共有」
俺は思わず息を吸った。
「……そこまで?」
「そこまで、だよ」
玲央は即答した。
「相手は“計算する側”だ。
こっちも、連携しないと」
えまが少し笑う。
「なんかさ、部活みたいだね」
「守備特化のチーム」
しおりが続ける。
その空気に、少しだけ緊張がほどけた。
俺は拳を握る。
「ありがとう」
短い言葉だったけど、
今の俺には、それしか出てこなかった。
「俺は澪の一番近くにいる。
でも、それだけじゃ足りない」
みさとが言う。
「一番近いからこそ、見えないこともあるよ」
その通りだった。
“好き”って気持ちが、
時々、判断を鈍らせる。
「だから」
玲央が締めくくる。
「誰か一人が欠けても、崩れない形を作る」
その瞬間、俺ははっきり理解した。
——これは“守る”じゃない。
——“囲う”でもない。
澪が、自分で歩けるようにするための連携だ。
「……やろう」
俺が言うと、全員が頷いた。
その頃。
別の場所で、
恒一は一人、違和感を抱えていた。
澪の周囲に、
いつも誰かがいる。
偶然にしては、多すぎる。
(……連携?)
その考えが浮かんだ瞬間、
彼の中で、何かが軋んだ。
計算通りに動くはずの歯車が、
噛み合わなくなり始めている。
そしてそれは——
“守る側”が、
ようやく本気で繋がった証だった。