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あの春を、まだ俺だけが歩いている。
まだ六人だった頃の楽屋は、今よりずっと狭かった。
レッスン終わりの空気は汗と疲労でぐちゃぐちゃで、床には誰かのバッグとペットボトルが転がっている。
その真ん中で、俺、佐久間大介が大の字になって寝転がっていた。
「むり、もう一歩も動けない」
「毎回それ言ってんなお前」
呆れた声で返したのは翔太だった。
荷物をまとめながら、ちらっと俺を見る。
「じゃあ置いて帰るわ」
「えっ、うそ、ごめん待って」
慌てて起き上がろうとして、結局また床に戻る俺に、深澤が吹き出した。
「ほんとしょーもないな、お前ら」
「いや、翔太が冷たい!」
「甘やかすからだろ」
煕がそう言うと、翔太は「別に甘やかしてねぇし」と小さく返す。
でも結局、俺のバッグを持ち上げるのはいつも翔太だった。
それを見ても、誰ももう何も言わない。
最初は気を遣っていた阿部ちゃんも、今では普通に受け入れている。
舘なんかは時々面白そうに眺めているだけだった。
六人の中ではもう、当たり前の空気だった。