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アリスに促され自室に戻ると、花崎祐樹はスーツのポケットの上からソレを撫でた。
ゲーム中は、尾山を抑え込むことで手いっぱいで提示する余裕がなかったが、これを出せば案外、仙田はすぐに負けてくれたかもしれない。
ソレを見ながら深く息を吐く。
それともーーー。
仙田が言った通り、全員あそこで自殺で死んだ方が幸せだったのだろうか。
しかしーーー。
彼は生き返った。
自分の為に死んでくれた誰かを犠牲にして。
アリスの言うことが全て真実だったとして。
自分の為に死んでくれる人間なんて一人しかいない。
視線を上げて、彼女のことを想う。
息子の為に死ぬのと、
息子がいない家で一人きりで生きていくのは、
どちらの方が辛いだろう。
それを彼女本人に聞くことは、もう未来永劫叶わない。
自分は恵んでもらった命を大事に、
彼女からもらった思い出を胸に、
生きていくしかない。
花崎は大きく息をつきながら、サイドテーブルの上に警察手帳を置いた。