テラーノベル
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これ、連載になっちゃってる…早く完結させよ
世界の終わりに、君がいた ―
あれから、どれほどの人間を壊したのか覚えていない。
社会の隙間に紛れて、騒ぎを起こさず、静かに、確実に。
ひとつずつ、“ふたりを壊した世界”を焼き尽くしてきた。
でも、燃やす炎の先には、
いつも、りうらの笑顔があった。
「ねぇ、ないこ」
「ん」
「俺、お前と出会えてよかったわ」
「……俺も。
お前がいたから、ここまで来れた」
部屋の窓から見える夕日が、どこまでも赤くて、
ふたりの手はずっと繋がってた。
「なぁ、もうすぐ限界だと思わねぇ?」
「うん。足跡、残しすぎた。
そろそろ“迎え”が来る」
警察でも、世間でも、どこでもいい。
もう十分、わかってた。
この世界には、ふたりの居場所はもう残されてないってこと。
「じゃあさ――最後の約束、果たそ?」
「……ああ」
◆
深夜2時。
誰もいない街の屋上。
遠くにパトカーのサイレンが聴こえる。
りうらの隣に立って、風に目を細めた。
「覚えてる?
あのとき、ふたりで死のうとした時さ、
“今度こそ完璧に”って、誓ったよな」
「うん。
俺、あの時は“終わらせたい”ってだけだったけど……
今はちょっと、違うかも」
「……?」
「終わらせたいんじゃなくて――
この愛を、“そのまま”閉じ込めたい。
綺麗なまま、汚れてないまま、俺たちのままで」
「……バカ、泣かすなよ」
りうらが、俺の頬を拭った。
「お前は、俺の全部だよ」
「俺も。
世界よりも、未来よりも、
お前の存在だけが、俺の“正しさ”だった」
ふたりで数を数えた。
心を合わせるように。
「いち」
「に」
「……さん」
――手を繋いだまま、飛んだ。
風の中で、俺は確かに聞いた。
りうらの声で、
「ありがとう。愛してる」
って。
◆
――でも、また、生きてしまった。
目を覚ましたら、病院。
全身ギプスで、動けない。
でも、生きてる。
りうらも、隣の部屋で生きてる。
俺たちは、
きっと“壊せない何か”に、何度も何度も拒まれてるんだ。
「ないこ」
ドアが開いて、りうらが来た。
車椅子に座ってるのに、笑ってる。
「死にそこなったな、また」
「うん。
……でもさ、もう、いいかなって」
「……え?」
「壊すのも、燃やすのも、終わり。
俺さ、“生きる地獄”のほうが、お前と一緒にいられるなら耐えられる」
「…………」
りうらは黙って、俺の手を握った。
「じゃあ、ふたりで罪を背負おう。
これから先、裁かれても、憎まれても、
ずっと一緒に」
◆
数年後、俺たちは
“重度の精神疾患による治療と隔離”という名目で、
ある山奥の施設に入った。
誰にも邪魔されない。
誰も訪れない。
でも、そこには
ベッドがひとつと、窓の外に咲く花と、
そして――りうらの手の温もりがある。
「お前がいれば、どんな終わり方でも、いい」
「俺も。
俺の地獄は、お前がいない世界だから」
ふたりで窓の外を眺める。
季節が巡り、雪が降り、また春が来る。
世界は壊せなかった。
でも、
ふたりで生きて、ふたりで贖って、
ふたりの愛だけを守れた。
それが、俺たちの
――「本当の、地獄の中の幸福」だった。
コメント
3件
重度な精神疾患患ってたのかよ((( まずあそこを引き離さないとループになる気が…()