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検査が終わった後、涼ちゃんは静かな廊下に座って順番を待っていた。
主治医が検査室の前に現れ、白衣のポケットから一枚、検査結果の紙を取り出す。
「藤澤さん、検査の結果が……」
主治医の声は柔らかかったが、涼ちゃんはじっと下を向いたまま、何の反応も示さない。
紙の擦れる音だけが、静かな空気の中で響く。
主治医はそっと身体をかがめ、もう一度声をかけた。「……涼
藤澤さん、大丈夫ですか?」
返事はない。
そのまま涼ちゃんは、突然フラリと小刻みに揺れ、足元が崩れた。
力の抜けた身体が、ぐったりと前に倒れ込んだ。
「藤澤さん!」
主治医はすぐに両腕で涼ちゃんを包みこみ、そのままゆっくりと床に寝かせようとする。
抱き上げると、涼ちゃんの身体は重さを全く感じさせないほど頼りなく、
人形のようにぐったりとしていた。
主治医は片手で涼ちゃんの頭を守りながら、そっと声をかけ続けた。
「大丈夫、ここにいますよ――ゆっくり呼吸しましょう」
でも、涼ちゃんは微かな息だけを残し、じっと目を閉じて何も言わなかった。
廊下の空気がひどく静まり返って、
主治医の手の中で、涼ちゃんの小さな身体だけが、どこか遠い場所へ行ってしまいそうに思えた。
――