テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
主治医の腕に抱えられた涼ちゃんはぐったりとして、まるで力の入らない人形のようだった。検査室の前は、急に慌ただしい空気に変わる。
「ごめんね、涼ちゃん。すぐに病室へ戻ろう」と主治医は静かに声をかけながら、涼ちゃんを優しく抱き上げる。
看護師もすぐ駆け寄って、手伝いながら、ストレッチャーを手早く用意した。
ストレッチャーの上で、涼ちゃんは目をつむったまま、わずかに胸が上下しているだけだった。
主治医と看護師が交代で押しながら、廊下をまっすぐ病室へ。
ドアが空くと、𓏸𓏸がちょうど水差し片手に、びっくりした顔で駆け寄ってくる。
「え、涼ちゃん!? なにがあったの?」
𓏸𓏸の声が震える。
「大丈夫、大丈夫。今すぐ測るからね」看護師がなだめるように言いながら、
みんなで慎重に、涼ちゃんの体をベッドへ移す。彼の身体は相変わらず軽く、意識はまだ戻らない。
看護師が手早く脈を取る。「脈、弱い……」
もう一人が体温計を差し込む。
𓏸𓏸はベッドの端で手をぎゅっと握りしめながら、息を呑んでじっと涼ちゃんの様子を見守る。
緊張が部屋を満たし、ほんの小さな寝息だけが静かに響いている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!