テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第二話:歪な愛の形
「イルミ、あんたは好きなことをしていいのよ」
リアの言葉に、隣に立つイルミの瞳がわずかに細められた。
感情の読めない漆黒の瞳。けれど、双子の姉であるリアにだけは、その奥にある僅かな「温度」がわかる。
「……『好きなこと』か。リアはいつも、僕に甘いね」
イルミの細い指先が、リアの銀色の長髪をひと房掬い上げた。
その仕草は酷く丁寧で、まるで壊れやすい宝物を扱うかのようだった。
「キルアを教育するのも、家族を守るのも、僕にとっては『やりたいこと』だよ。それを君が肯定してくれるなら、これ以上のことはない」
「肯定はしていないわよ。ただ、否定もしないだけ。……貴方の執着も、私への独占欲も、全部ゾルディックの血のせいでしょう?」
リアはイルミの手を振り払うことなく、自嘲気味に笑った。
彼女もまた、この狂った檻の中で生きる一員なのだ。
二人が廊下を歩いていると、曲がり角からゼノが現れた。
一家の祖父であり、この家の「規律」そのもの。
「リア、イルミ。……キルアの様子はどうだ」
「相変わらず反抗期ですよ、おじいちゃん。でも、可愛いものよ」
リアが淡々と答えると、ゼノは「ふむ」と顎を撫でた。
「キルアは素質がある。だが、甘さは命取りだ。リア、お前からも厳しく言っておけ。奴は、お前の言葉なら少しは聞き入れる」
「……善処するわ」
リアは深々と頭を下げた。
期待という名の呪縛。それはキルアだけでなく、リア自身にも重くのしかかっている。
ゼノが去った後、イルミがボソリと呟いた。
「キルアには、もっと強い『針』が必要だ。僕から離れないように、何も考えられないように……」
「……また、それ?」
リアは溜息をつき、イルミの頬に手を添えた。
双子だからこそわかる。彼の愛は、相手を窒息させるまで締め付ける「毒」であることを。
「イルミ。あんたがキルアを縛るなら、私はあんたを縛っておいてあげる。それでバランスが取れるでしょ?」
「……。リアに縛られるなら、悪くないね」
イルミの口角が、微かに、本当に微かに上がった。
それは、他の兄弟にも、両親にすらも見せない、双子の姉だけに許された特等席。
「さあ、行きましょう。パパが呼んでるわ。今日の仕事は、少し遠出になるみたいよ」
銀色の影と黒い影が、並んで屋敷の深淵へと消えていく。
月明かりさえ届かない、暗殺一家の夜は更けていく。
瑞浪(みずは)