テラーノベル
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私にとって、ヒカリは扱いやすい後輩だった。
テキパキと動いていて、よく仕事ができる。濃いメイクに金髪といういかにもギャルな見た目だが、意外にも居酒屋の忙しさの中では、そういう人間が一人いるだけで場が回るのだ。
金曜の夜、ピークを越えたホールで、私は他のバイトとだらだら話していた。恋愛の話題になって、誰かが「女の子同士ってどうなの?」と軽く振った。
「女の子で付き合うなら、ヒカリかな。顔可愛いし!」
私は適当に答えた。
いつもの軽口。ヒカリ本人が少し離れた場所にいたことにも、私は気づいていなかった。
数分後、ドリンク場で二人きりになったとき、ヒカリが何でもない顔で言った。
「聞こえちゃったんですけど」
私はグラスを拭く手を止めた。
「なに?」
「さっきの。女の子で付き合うなら、ってやつ」
「ああ、あれ?」
「はい。私のこと、言ってましたよね」
その言い方が、少しだけ引っかかった。
「あー、そうだよ!ヒカリの顔好きなんだよね笑」
「そうなんですか」
ヒカリが、何か言いたげな顔でこちらを見つめてくる。
「……じゃあ、付き合ってくれますか?」
「え?」
思ってもみない言葉に、笑ってしまった。
「なにそれ、いいよ!笑」
「……本当ですか?」
「うん、もちろーん」
ヒカリらしくない冗談だと思ったが、軽く受け流した。
「バッシングしてくるね」
私はその場を離れた。
(ヒカリってそんなこと言う子だっけ?)
その時は、それ以上は深く考えなかった。
ただ、冗談が少し行き過ぎただけだと思っていた。
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お読みいただきありがとうございます!前作はこちら▶︎『先輩は悪いヒト』https://teller.jp/se/1521y4ttu345b-8231891689