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ここはベンガルトラが住む、ある草原です。ここに豊かで広大な王国(なわばり)を築くベンガルトラがいます。
彼女の名はアバロー。王国はとても広く、水場もあちこちあるし、獲物も、隠れ場所も豊富。ちょうどよい高さに生い茂った草が、アバローをうまく隠し、狩りの成功率を上げてくれる。時々、ハヌマンラングールのアイーザが、草食動物の味方をし、アバローの襲撃を教えることがあるので失敗はありますが、それでも高い成功率です。
実はアバローは子育て中。子供は5匹で、上の四匹はオス、末っ子だけ、メスです。末っ子の名は、マーヤ。兄妹で一番果敢で、元気。長男のルーランと大の仲良しです。
その日、アバローはいつものように朝から狩りに出かけます。返ってくるのは夕方頃。アバローは子どもたちを養うために出かけました。朝から夕方までいないのはいつものことなので、子どもたちは気にせず、跳ね回っています。そして、夕方。もうそろそろアバローが、帰って来る時間帯です。しかし、それから一時間経っても、アバローは帰ってきませんでした。夜になっても、翌日の明け方になっても。
アバローは密猟者に殺されました。ひゅうっと飛んでくる風が、火薬の匂いをまとわせていました。
この日から、マーヤたちは一人で生きていかねばなりませんでした。幸い、もうすぐで親離れの時期だったので、生きていけるかもしれません。父親は、結婚するとすぐ、縄張りを離れ、別のメスを探しにいきます。つまり、シングルマザーなのです。そしてマーヤたちは、守護者であるアバローを失いました。今日から一人で生きていかねばなりません。
マーヤは持ち前の勇敢さ、果敢さで立派に成長し、母、アバローの広大な縄張りの跡継ぎとなり、新女王となりました。仲良しの長男、ルーランはひっそりと縄張りを火薬の匂いをまとわせてやってきた風と共に去りました。