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「それとな、俺の方でも花房や四条について色々調べてみたんだが、花房は苑流のボスと黛組の頭の三人で結託して売春斡旋してやがる。女は花房の会社の社員って事になってるが、苑流のボスが女の弱み握って逆らえない状況に持っていき、黛組に送られてそこから流されてる」
「化粧品会社なだけあって、社員に女が多いから好都合ってか。胸糞悪ぃ奴らだな」
「ああ。それで四条のとこは製薬会社だが裏で媚薬やら怪しげな薬を作ってるらしくてな、それを試すのに女が必要だ。そこで、それを知った花房がデータを取るのに丁度いい女が沢山いるという話を持ち掛けた」
「そこから二人は繋がったのか」
「らしいな。それと同時期に、四条は父親からそろそろ結婚を考えるよう言われていた。そんな時、詩歌に会って容姿が良い事や純粋そうなところが色々と使えそうだと思ったんだろうな。大手企業同士に繋がりが生まれれば、やり方次第で利益も倍になるから結婚が利益しかないと考えての事だろう」
「詩歌を選んだ動機が不純過ぎる。ますます奴らに渡す訳にはいかねぇな。それどころか、連れ戻されれば逃げた罰として酷い目に遭うのが目に見えてる」
恭輔の話を聞いた郁斗は花房と四条の行いを知れば知る程苛立ちを募らせ、いつになく冷静さを無くして怒りを露にしていた。
その夜、美澄はボーイとして店内に潜り込んで詩歌の警護を続け、そんな彼に見守られながらいつも通り常連客や新規の客の接客をこなしていた詩歌は久しぶりに大和からの指名を受けた。
「大和さん、お久しぶりです」
「ああ。悪いな、なかなか来れなくて」
「いえ。お仕事お忙しかったんですか?」
「ああ、まあ、色々とな」
「お忙しい中、来てくださって嬉しいです」
「白雪に会いたかったから、無理矢理時間作ったんだ」
大和はあれから一度だけ一人で来店したものの、それ以降姿を見せてはいなかった。
初めて接客をして初めて名刺を貰った相手だからか、詩歌は彼がなかなか来てくれない事を密かに心配していたのだ。
久しぶりとあって二人の会話は弾み、終始楽しい時間を過ごしている中、仕事を終えた郁斗が店にやって来た。
「郁斗さん、お疲れ様です」
「太陽、ちょっと話がある」
「分かりました」
郁斗は来店するなり太陽に話があると奥へ入って行く。そして、
「白雪さん、ちょっと……」
郁斗が詩歌を呼んだ事で、ボーイに扮した美澄が声を掛けてくる。
「…………分かりました。大和さん、少しだけ失礼します。すみません」
「ああ、白雪も人気になったみたいだから仕方ねぇよ。待ってる」
「すみません、行ってきます」
大和に声を掛けた詩歌は申し訳なさそうに席を立ってVIPルームの方へ歩いて行った。
それを待機席で見ていた樹奈は別のボーイに、
「ねぇ、私を白雪ちゃんのお客様のところに付けてよ」
自分を大和のヘルプに着けるよう要求し、詩歌と入れ違いに大和の席へ座った。
「初めましてぇ、白雪ちゃんが居ない間お相手させてください」
「……ああ、よろしく」
正直詩歌以外の接客に興味の無い大和だけど、暇潰しには丁度良いかと思いの外すんなり受け入れた。
一見ただ詩歌が戻ってくるまでの穴埋めをしただけの樹奈だけど、実はそうでは無かった。彼女は怒っていたのだ。
本来自分が郁斗の指名を貰える事になっていたはずなのに、他でも無い詩歌が指名されてVIPルームへ向かった事を。
それなので、自分も詩歌の客を横取りしてやろうと考えていたのだ。それも、郁斗に気に入られている事を混じえ嫉妬させるよう煽りながら。
案の定、樹奈から話を聞いた大和は苛立ち始めていた。せっかく忙しい合間を縫って会いに来たのに自分より上客が来たらそっちを優先している詩歌に腹を立てていたのだ。
そんな怒りに震える彼を目の当たりにした樹奈はニヤリと口元に笑みを浮かべながら詩歌が戻るのを今か今かと待っていた。