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カーナビも使わずに、迷う事なく僕を家まで送り届けてくれた。
「よく僕の家がわかりましたね?」
「まっ‥前に1度、何かで住所を見た事があったから…。それに、私この辺りの地理には詳しいから…」
「なるほど…。どうりで迷わず来れた訳ですね」
それだけの理由で、何も見ずにピンポイントで僕の家に来られるなんて…‥
何かを隠しているには違いなかったけど、それを知るすべは何もなかった。
「良かった。わかってもらえてたんだ?」
「まっ‥まぁ…‥。それより、すいませんでした。家まで送ってもらっちゃって」
「いいのよ、気にしないで」
「紺野くん…」
「何ですか?」
「うぅん…何でもない。じゃあ、またね」
遠藤さんは何か言いたげな顔をして僕を見ていた。
「またね…おやすみなさい」
「ありがとうございました。気を付けて帰って下さい」
遠藤さんには会う度にいつも癒されるが、今日はいつもと様子が違うような気がした。
言葉にするのは難しいが、今日の遠藤さんは何かを胸に秘め、自分の気持ちを押し殺しているように見えた。
一体何なんだろう…?
「葵さん、また明日…」
「えぇ…」
葵さんは、カラオケ店を出てから1度も口を開く事なく、ずっと黙っていた。
怒っているようだった。
当選といえば当然だ。
目の前で僕と遠藤さんのキスを見てしまったんだから…‥
家の中に入り、自分の部屋のベッドで横になっていると色んな事が脳裏をよぎった。
茉奈ちゃんの容態…‥
葵さんの先程の態度…‥
葵さんの傍にいる能力者…‥
遠藤さんの何かを隠しているようなあの態度…‥
考えれば考えるほど頭が痛くなる。
時間が経つにつれ、いてもたってもいられなった僕は、気付くと葵さんに電話をかけていた。
『もしもし…紺野です。もう家に着きましたか?』
『先程着きましたけど、どうかしました? もしかして私の態度を気にして?』
『そっ‥それもあります。それに茉奈ちゃんの事も気になったので…』
『私のさっきの態度は謝ります。紺野さんが悪い訳でも美咲ちゃんが悪い訳でもありません。私の妬きもちです。嫉妬です。紺野さんが、私以外の女性と話していると胸の辺りがムシャクシャして自分を抑える事が出来なくなってしまうんです…』
『葵さん、それって…』
『ちっ‥違います。そんな風に解釈しないで下さい。そんなんじゃありません…。私は只、紺野さんの事が頭から離れなくて…気付くと紺野さんの事ばかり考えて…苦しくて…切なくて…会いたくて仕方ないんです…。只それだけです』
『・・・・・』
これって告白と受け取っていいのだろうか?
それとも、告白してるって事に気付いていないのか?
僕は何て答えたらいいのかわからず、しばらく黙っていた。
『ごめんなさい。私のさっきの発言で悩ませちゃいましたね…』
『大丈夫です』
『わかってて言いました』
『どうして?』