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『だって悔しいじゃないですか! 例え未来の私と紺野さんが結ばれるような事になったとしても、紺野さんは今…亜季ちゃんに惹かれてる…。好きなんですから…』
『葵さん…』
茉菜ちゃんの言う通り、やっぱり知ってたんだ。
どうやら僕は、知らず知らずのうちに葵さんを傷つけ苦しめてきたようだ。
葵さんだけではない。
それは、亜季ちゃんにしても同じだ。
『ゴメンね。ずっとツラい思いをさせてきて…。でも今すぐには、葵さんの気持ちに応える事は出来ないんです』
『いいですよ。もともとわかってた事ですから…』
『そうだとしても、僕は葵さんをずっと傷つけてきた。ツラい思いもさせてきた』
『もう、いいですよ…』
『良くないですよ』
『いいって言ってるじゃないですか!』
『いい訳ないじゃないか!』
『そっ‥そんなに悪いと思ってるんだったら、亜季ちゃんの事は忘れて私の事を…‥』
『・・・・・』
『出来ないんでしたら、中途半端な優しさや同情はよして下さい。余計私が惨めじゃないですか…』
『別に葵さんを好きにならないって言ってる訳じゃないんだ…。今は亜季ちゃんとの事を整理してる所…。気持ちの整理がついたら、ちゃんと葵さんと向き合うから…‥』
『本当に?』
『本当です』
『期待してもいいですか?』
『少しだけ待っていて下さい』
『はい…』
しばらくの間…電話越しでも互いの息づかいが聞えそうな程の沈黙が続いた。
顔が見えない分、とても長く感じられた。
『・・・・・』
『・・・・・』
『こっ‥この話はとりあえず置いておく事にして、話を元に戻しませんか?』
『そっ‥そうだね…』
『紺野さんは茉奈ちゃんの事で聞きたい事があって電話してきたんですよね?』
『そうなんだ…』
『茉奈ちゃんの事ですけど、未来の映像が見えてこないんです。私たちが茉奈ちゃんに薬を持って行った事で未来が変わりつつあるのかもしれません』
『それなら茉奈ちゃんが助かるんですね?』
『たっ‥助かります』
『良かった…その答えが聞けて』
『私も紺野さんの声を聞けて落ち着きました…』
そんな言葉とは裏腹に、葵さんの声のトーンが少しばかり下がったのに気付いた。
もしかしたら、葵さんには何か見えているんじゃないだろうか?
そんな疑いの念を抱かずにはいられなかった。
だとしたら、何で教えてくれないんだ?
そんなモヤモヤした状態で電話を切り、床に就いた。
ブルルルル…ブルルルルル…‥
突然の電話だった。
時計を見ると、日付が変わり夜中の3時を回っていた。
『もしもし…誰? 何か用?』
僕は寝ぼけながら電話にでた。
『紺野さん…』
『葵さん? こんな時間にどうしたんですか?』
嫌な予感がした。
『まっ‥茉奈ちゃん…しっ…心臓が1度止まっちゃって…‥でっ‥電気ショックでっ…今は動いてるけど…‥』
電話の向こうの葵さんは、ひどく泣きじゃくっていた。