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あれからもう何日経ったろうか。そんな事をぼやけた頭で考えていた。
「あれ?そういえばなんでこんな遺書を書いたんだ?別に病気だったわけでもないだろうし……」
遺書。まあ彼女からの最後の手紙だ。 その遺書には少し違和感があった。それは、死ぬと分かっていたかのような書き方、タイミングということ。
予知能力があった?いや聞いたこともそんな素振りも無かったし…偶然?だとしても書く意味が見当たらない。 色々と考えを巡らせたが、1つを除いてはすべて有り得ないことだった。
「遺書の事もそうだけど、これ…どうしたらいいんだろう」
『これ』とは、彼女の手紙の返事を書いた飴玉の包み紙の事だ。 届ける場所や人なんて指定されていなかった。
―――バタン
玄関の方から何かを置いたような音が聞こえた。
「何も頼んでないと思うけど…」
玄関前には小さなダンボール箱とそれに挟まれた僕宛ての手紙があった。
「最近は手紙多いな…」
何か分からない荷物を部屋に置き、挟まれていた手紙を読んでみた。
『依織くんへ。 最初に予言しましょう。今、この手紙が届いたのは私が死んでから1週間後ですね?』
カレンダーを見ると確かに彼女がいなくなった日から丁度1週間が過ぎていた。
『予想になっちゃうけど、今依織くんが考えてることの答えを言います。 まず、なんであの遺書を書いたのか。それはもう分かってると思うけど、私、自殺しようと思ってたから。
2つ目。飴玉の包み紙の事。返事、もう書いてくれたかな?もし書いてくれたなら、それをダンボールに入ってる封筒に入れてね。 そしてもう1つ。ダンボールに入ってる星のライトの中にもう1つ、手紙を入れてるから、それも読んでね。 じゃあまた後でね!』
情報量の多いこの手紙で唯一理解出来たのが、やっぱり彼女は自殺しようとしていたこと。 遺書について考えた時、ふと「自殺」という二文字が浮かび上がってきた。
だから彼女は自殺する前に遺書という形で気持ちを伝えようとしたのだろう。 でも実際には、不幸な事故で亡くなってしまった。 だから手紙の中の彼女は、それを知らず、自分は自殺し、亡くなったと勘違いしているのだろう。 そしてもう1つ。ダンボール箱に入っていた星型で青色のライト。
このライトには、不自然な穴が空いていた。
「手紙…手紙…あ、あった」
『さっきぶり、依織くん。あ のライト、すごく可愛いでしょ!私が初めて自分のお金で買った物なんだ!
ねえ依織くん、依織くんは星、好き?セイカは好き?』
所々に涙の跡があった。おそらく、辛いことを思い出していたのだろう。
「…好きだよ。」
『私ね、名前のせいでたくさん言われてきたけどね。依織くんが楽しそうに、照れくさそうに呼んでくれるから好きになったよ。 でもね、ちょっと疲れちゃった。依織くんに出会って、大切にしたいと思えるものをたくさんもらって。この上ないほど幸せで輝いてると思った。だけど、私は嘘をついたから。依織くんは小さいことだし気にしてないって言ってくれるだろうけど、私の中ではその小さな嘘がまとわりついて私を離してくれない。ってこんなのはただの言い訳になっちゃうか!』
最後の明るさも自分を隠そうとした明るさだってことを涙で少し変色した紙が物語っている。
『返事を入れた封筒は持っておいて。いつか、いつか私に届くから。
そして最後に、依織くん。大好きだよ』
コメント
2件
ひゃあああっ、!セイカちゃん!? 私も好きだよ(? 世界観が不思議で大好きです...! 投稿ありがとうございます! 誕生日おめでとうございました!