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コメント
3件
書いてすぐ出してる感じかな。
5話、加筆修正しました。
「……ふっかが、最近ちょっと重くてさ」
「へ?」
缶コーヒーを指で転がしながら、阿部はぽつりと漏らした。
「最初は、ラクだったんだけどね。 あいつ、最近“情”みたいなもん持ち込んできてさ。 それが、ちょっと……うざいっていうか、つまんないっていうか」
佐久間はケラケラ笑いながら、ソファにごろんと寝転がる。
さっきまで佐久間の家で久々にふたりきりでゲームをしてた。
「へぇ〜……ふっかが?意外。 ていうか、珍しいじゃん阿部ちゃんがそんなこと言うの」
「お前くらいだよ、こういう話できるの」
その言葉に、佐久間の眉がわずかに動く。
「ふーん。 じゃあさ――その深澤、俺にも回してくんない?」
「は?」
「いや、マジで。興味あるし。どんな感じか、ちょっと見てみたい」
阿部は一瞬だけ考えたあと、ふっと笑った。
「……別に、いいけど」
⸻
🏠
あれから深澤は、自分から誘いのLINEを出来ずにいた。
しばらく悩んで落ち込んでたが、ある夜、 初めて阿部に呼ばれた。
浮かれた気持ちを押し殺して、いつも通りインターフォンを押す。
出迎えたのは――上裸にグレーのスウェットを履いた佐久間。
「え、ちょ……なんでお前がここにいんの?」
「おじゃましてまーす!阿部ちゃん、今シャワー中。待ってたよ?」
小首を傾げながら冗談みたいに明るい声でそう言う佐久間に、深澤は戸惑いを隠せなかった。
だけど、帰ることはしなかった。
🛋️
佐久間と2人でソファーに座る。
何かが、深澤の知ってる阿部の部屋とは少し違った。
「……佐久間も今来たの?」
そう言いながらキョロキョロしてる深澤を見て、佐久間が笑いながら
「んー。まぁ、ちょっと前から。さっきまでそのソファーで、俺たちも遊んでたの」
と言った。
わざと含みを持たせるような口調。
深澤の表情がこわばるのを見て、佐久間は悪びれずに笑う。
ケラケラと笑う佐久間の声が、やけに部屋に響く。
その音に、ふっかの神経が逆撫でされる。
「なにその顔~、図星?やっぱり気づいてなかったんだ。ふっかってさ、案外…無防備だよね、阿部ちゃんの前だと」
「……なんでお前がそんな言い方すんの」
小さな声だった。けど、確かに棘がある。
ふっかは立ちあがって佐久間から離れたところに座り直す。
「んー?だって俺と阿部ちゃんは何でも話せる親友ってだけ。ふっかと違って変に感情とか期待とかないし?」
そう言って笑う顔が、どこか冷たい。
深澤は何も言い返せず、ただ、手の平をギュッと握るだけ。
阿部に呼ばれた。だから来た。
それなのに――
その時、バスルームの扉が開く音がした。
振り向くと、パンイチの阿部が濡れた髪をタオルで拭きながら、 何もなかったかのような表情でリビングに戻ってきた。
「あ、ふっか。来てたんだ」
平然とした口調。笑顔。
だけど、その髪の濡れ方。首元にうっすらと残る、赤い痕――
それは、たぶん見間違いじゃない。