テラーノベル
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今日の昼休みは、珍しく誰も話しかけてこなかった。食レポをするだけで食費が浮くのは嬉しかったが、陽キャラ達に絡まれ、社内で注目を浴びるのは正直嫌だったため、今日のように一人でコンビニのおにぎりを食べるのは幸福だった。
──定時で上がっていく人達を見て、自分もあのように出来たらなと理想を述べながら、押し付けられた仕事を進めた。
「──あ、!!」
すると、何やら奥から声が聞こえた。
「っそうだ、あの人でいいや…!!」
こちらを向きそう話してきたので、不思議に思った。だがそんな事に構っている暇はないので、パソコンの画面に再度目を向けた。すると、先程の人はこちらへと高速で走ってきた。私に用があるのだろうか。
「貴方、食レポの人ですよね…!!」
「まぁ、はい」と返事をすると、何やら安堵したのか良かったと彼は呟いた。
「あの、とにかく話はあの人達に聞いてもらって、!」
「私はこれで…!!」
後ろにいる4、5人程の人達を指さすと、そう言い残してダッシュでどこかへと行ってしまった。 なんだったんだとは思ったが、私はそんな事に時間を使っていられるほどお人好しではないし余裕もない。あの人のことは気にせず…と思ったその時だった。
「…君ですか?イギリスが言っていたのは」
そう背後から声をかけられた。振り向くと、そこには先程の5人組がいた。
「……あなた方は……?」
私がそう聞くと、彼らは質問には答えず、ただこちらへと一方的に話してきた。
「…この後、私たちで勝負するんです。 」
「誰が一番美味しい料理を作れるか」
そう言うと、仕事など気にせず、彼は私の手を掴み引っ張って行った。
気が付けば私は、あっという間に家へと連れてこられていた。リビングの大きな机に座らされ、何が起きたかさっぱりだった。
「……申し遅れました。私は、イングランドと申します」
「本当はイギリスに審査員を任せるつもりだったのですが…」
ああ、思い出した。先程こちらに声をかけてきた人は、イギリスだった。なるほど、仕事を押し付けたのか…。
「イギリスが『あの方に審査員を任せます』と言い残して、どこかに行ってしまって…」
「審査員、やってくれるのですか?」
正直言うと、今からでも会社 に戻って残っている仕事をしなくてはならない。タイムカートも切らなければ…。
「…やってくれると助かるんだが。」
すると、彼とは別の人がこちらを鋭い目つきで見てきた。
「…あぁ、すまん。俺はスコットランド。」
私が怖がっているのを見て、そう優しく名を名乗った。
「…ぁー、私仕事が……」
小さな声でそう言う。
「審査員、やってくれますか?!」
すると、弱々しい声は彼の溌剌とした声にかき消された。
「僕はウェールズって言います!こっちの子は北アイルランドで、この子はアイルランド!」
指を刺しながら他人の名前までも言い、北アイルランドは笑みを浮かべ、アイルランドは少し嫌な表情をしていた。
「……やっていただけないでしょうか?」
「正直、審査員がこいつだけだと頼りにならなくてですね…」
と、イングランドはアイルランドの方をちらっと見ながら言った。
「…いやですから、私は仕事が…」
そう弱々しく言うも、皆の輝いた視線に耐えきれず、首を縦に振りこう言った。
「………やります」
どんな仕事も受けてしまうのは、社畜の性なのだろうか。
「ほんと!?んじゃ、早速始めましょう!」
そう言うと、アイルランドを残した4人は厨房へと向かっていった。
「…………あの」
私は隣に座っているアイルランドに声をかけた。
「…あなたは参加しないのですか?」
「…」
……話が発展しない。とても気まずい。そりゃそうだ。なんせ先程まで、名前も知らない初対面だったのだから。
「……あんた、よく承諾したね。」
ようやく口を開くと、彼はそう呟いた。
「…言っておくが。あいつら、あんたが想像する5倍は料理下手だぞ。」
彼は善意のつもりで言ったのだろうが、余計怖くなってきた。その時。
「…できましたよ〜」
厨房からイングランドの声が聞こえた。
「トップバッターは私!」
そう言うと、彼は厨房から出てきた。
手には、禍々しい料理が乗った皿を持っていた。私は、まだ知らなかった。
──こんなものは、まだ序の口なのだと。
続く。
コメント
2件
いつもいつもkawaiiと尊いをありがとうございますっっっ!! 次回が楽しみで仕方ねぇですわ…