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橘靖竜
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重すぎる蹴りを喰らい、僕の腰が本気で悲鳴を上げたところで、体育教師のトラ先生(推定体重250kg、ホイッスルを噛みちぎりながら登場)が大声を張り上げた。
「よぉーし! 全員集まれぇ! これよりハンドボール投げの測定を開始する!」
体育館に集まった多種多様な生徒たちが、ぞろぞろと巨大なボールの周りに集まる。巨大ボール──というか、ほぼ巨大な岩だ。
「先生ー! 質問でーす!」
僕の隣で息を切らしているレプ君(ウサギ)が、ピンと長い耳を立てて挙手した。手がないから耳で主張しているらしい。
「なんだ、レスプ!」
「俺たち前足しかない種族は、どうやって投げるんですか!」
「知らん! 咥えて投げろ!」
「パワー系脳筋教師かよ!!」
思わず口からツッコミが漏れたが、トラ先生は気にも留めていない。
第一投者は、あの学食で凄まじい圧を放っていたライオンだった。
彼は巨大ボールの前に立つと、獰猛な顔つきでボールを両前足で挟み込み、そのまま全身のバネを使って──
ドゴォォォン!!
体育館の壁に巨大な穴が穿たれた。ボールはそのままグラウンドまで飛んでいき、遠くで「キーッ!」という悲鳴が聞こえる。たぶんまた猿の教頭あたりが被害に遭ったのだろう。
「記録、50メートル! 次ー! ホモ・サピエンス!」
急に順番が飛んできた。
「え、僕ですか!?」
「そうだ! サピエン、お前は二足歩行で手が自由なはずだ! 期待しているぞ!」
トラ先生の目が怪しく光る。
僕は震える手で、自分の身の丈ほどある巨大ボールの前に立った。持ち上げようと両手を回すが、重すぎてピクリとも動かない。持ち上がるわけがない。人間だぞ?
「おいおい、何やってんだよサピエン~」
「手ぇ付いてんのに持ち上げられねぇのかよ~」
周りのゴリラやブタからクスクスと嘲笑が漏れる。くそっ、手があることが裏目に出るとは……!
僕は意を決して、ボールに抱きつき、渾身の力で「ヌオォォォ!」と声を上げながら前に押し出した。
コロコロコロ……ポテっ。
記録:1メートル20センチ。
体育館全体が静まり返った。
ウナギですら、水槽の中から哀れみの視線を送ってくるのがわかる。
「……サピエン」
トラ先生がゆっくりと僕の肩に、巨大で重い前足を乗せた。
「お前……来週から陸上部な」
「ただの運動音痴扱いじゃねえか!!」
僕の動物園での生き残り生活は、どうやら前途多難らしい。
コメント
1件
第3話読了!いやもうツッコミどころ満載すぎて笑ったわw 「咥えて投げろ!」って脳筋教師マジで草。ライオンの50m弾丸投げからサピエンの1m20cmコロコロまで、落差で腹筋やられた。 人間が一番戦闘力低いっていうこの世界観、ちゃんと生き残れるのか心配になるけど笑わせてもらった。次も気になる! ゆのさん、安定のギャグセンスだわ🔥