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今日は待ちに待った体育祭。2ーAの皆でさいっこうの思い出を作る、はずだった。でも、当日家を出て、足をひねってしまった。
皆に話したら「いいよいいよ、杏の分まで頑張るから!」「白石さんにトロフィー持ってくよ!」って言われた。私も、出たかったな。
残りの競技はあと3つ、全部合わせると10種目ある。一つの試合に十五分はかかっちゃうから、本当によく一人で待ったな、って感心してしまう。つまらなかったけど。
「はぁ……私、ついてないな…」
ゴソゴソッ
後ろから物音がする。なんだろう。その正体は何と、「白石。」冬弥だった。冬弥は2ーBだから色は緑。私達のクラスは青で冬弥も私も去年と一緒なんだ。
「どうしたの、冬弥。まだ種目残ってるよね?」
「ああ。だが、俺の出番はもうないからな。」
凄くブルーな気持ちだから、冬弥にも少しきつくあたっちゃう。
「…足、か。」
「うん。そうなんだ。ちょっとひねっちゃって、あはは、でも大丈夫だよ!皆が活躍してるところ見れるから大満足!」
「我慢するな、本当は出たかったんだろう?」
冬弥は鈍感なのか鋭いのか分からなくなる時がある。強気になったのがバレバレだ。
「あー、やっぱわかっちゃう?」
「見ればわかるな。」
「そっか。」
こうやってわざわざ遠いのにこっちまで来てくれるところ、やっぱり優しいなって思う。
「…ここで、競技を見てもいいだろうか。」
「えっ?まあ、いいけど…」
まだそばに、居てくれるんだ。
「あ、冬弥見てたよ、徒競走1位だったじゃん!」
「ああ、ありがとう。ただあれは偶然だろう。」
「そんなことないと思うけどなぁ。」
ずっと見てたよ、団体競技でも個人競技でももの凄くカッコよかった。私は、冬弥のことが好きなんだよ。だから、今一緒に居れて、とってもうれしいんだよ。
「ここは、とても涼しく、見晴らしがいい。」
「そうだよね。私ばっかり、ズルいよね。」
皆は炎みたいに暑くても全力で頑張ってるのに、私は日陰で一人ぽつんと。
「そんなことはない。白石を先ほどまでずっと見ていたが、白石からすると逆にここにいる全校生徒のことを羨ましがっていたように見えた。」
「ずっと、見てた?」
「?ああ、ずっと。」
嬉しい。まあ確かに羨んではいたなぁ、冬弥は本当に凄い。
「そんな白石を見て、おれにも何かできることがあるんじゃないか、とそう思ってここに来た。だが、あまり役に立てていないようだな。」
「何言ってんの?役に立ってるに決まってるじゃん!」
「本当か!」
「本当だよ。」