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空星 瑠璃
profile
相波 麗奈 「あいなみ れいな」
伊達工業高校三年生。女子マネ
like💞 クッキー
but💔 特になし
二口堅治「ふたくち けんじ」
伊達工業高校二年生。
like💞 酸っぱいグミ
but💔 特になし
題名 「可愛げのない後輩君ですね」
新しいクラス、新しい教科書。窓の外を舞う桜は、浮ついた春の訪れをこれでもかと強調している。
けれど、二口堅治にとっての「春」は、少し苦い味がした。
「……麗奈さーん。わざわざ一個上の階まで来るの、結構疲れるんすけど」
伊達工業高校、3年A組の教室前。
二口は、首の後ろを手でさすりながら、わざとらしく大きなため息をついた。その視線の先には、窓際で一人、放課後の日差しを浴びている相波麗奈がいる。
「あら、二口くん。わざわざ来なくていいって言ったのに」
麗奈が教科書を閉じ、ふっと微笑む。その余裕のある表情。
つい数週間前までは同じ階の教室にいたはずなのに、制服の胸元に輝く「3年」の学年章が、ひどく遠いものに見えて二口は眉を寄せた。
「そうはいかないでしょ。バレー部の遠征費の書類、麗奈さんが持ったままなんだから」
「あ、ごめんなさい。……はい、これ」
麗奈が差し出した封筒を受け取ろうとして、二口はわざとその指先に自分の手を重ねた。
ピタ、と麗奈の動きが止まる。
「……二口くん?」
「3年生になったからって、急に大人ぶるのやめてもらえます? 先輩風吹かされるの、イライラするんで」
本当は、違う。
自分を置いて、一足先に『卒業』という出口に近い場所へ行ってしまった彼女に、焦っているだけだ。
二口は麗奈の手首を軽く掴み、ぐいと自分の方へ引き寄せた。
「……ねえ。麗奈さん。あんた、受験勉強とかにかこつけて、俺と会う時間減らしたりしないでしょ?」
不敵な笑みを浮かべてはいるが、掴んだ手に力が入りすぎていることに自分では気づいていない。
麗奈は少しだけ目を見開いたあと、困ったように、けれど愛おしそうに目を細めた。
「……そうね。二口くんが寂しがらない程度には、構ってあげる」
「は!? 誰が寂しがってるって……!?」
「ふふ、顔に出てるよ。……ほら、早く部活行かないと滑津さんに怒られるよ、主将さん」
麗奈の細い指が、二口の頬を軽く突く。
その感触に、二口は言葉を失って顔を真っ赤に染めた。
「……っせーな! 麗奈さんこそ、勉強しすぎて老けないでくださいよ!」
捨て台詞を残して、二口は逃げるように廊下を駆けていく。
階段を降りながら、彼は自分の胸を強く押さえた。
あと12回、満月が巡れば、彼女はこの場所からいなくなる。
その事実が、4月の生ぬるい風に乗って、二口の胸をチリリと焼いた
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余談
ということでこちらは12話構成です。
しばらく投稿してなかったうちに もう全話書き終わってます🫣