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rui
76 ◇10年後
離婚する気のない蒼馬正義と蒼馬由香、そして必ずしも蒼馬との結婚をマストにしていない
満島まほりの、それぞれの6年が大きな変化もなく過ぎていった。
由香は50才になり、美代志は29才になっていた。
この日は、庭の手入れと美代志への食事の差し入れのため、由香は祖父の家へ来ていた。
家から持参していた”おでん”と”キャベツに豚肉、キノコ”などの入った野菜炒めを温めて
器に取り、テーブルに出したりして台所と和室を行ったり来たりしていたときのこと。
美代志も手伝おうと食器を運んだりお茶を沸かしたりしていたその時……。
和室に入ろうとした美代志と台所へ行こうとした由香は、途中でぶつかりそうになり、
互いがよけようとして3回ほど同じ方向によけてふたりともアタフタした。
「美代志くん、私たちってすごく気が合うみたい」
「……」
冗談を言ったのに美代志が押し黙ったまま、横を向いている。
「どうしたの?」
「ずっと言いたかったことがあります」
「なぁに? 話して……」
「このまま、ずっとこの家に住まわせてもらっていいのでしょうか?
本当はちゃんと別に部屋を借りて出ていくのがいいって分かってるんです
けど……余所に行ってしまったら、由香さんとの縁が切れてしまいそうで」
「そんなこと……」
「僕は、ずっと由香さんや悟くん、圭くんたちのそばにいたいんです」
「もちろんよ。あなたが住まなければ今のところ誰も住む予定ないし。
それに、私も美代志くんと同じ気持ちだよ。これからも仲よくしてね」
「僕は、その……由香さんのことが好きなんです」
「ありがとう。私も美代志くんのこと好きよ」
私は、美代志くんの自分への好意が、異性としての『好き』であることに
気がついていた。
自分も少なからず彼に好意を抱いていたからだ。
それにこの場で、そうでなければわざわざ『由香さんのことが好きなんです』とは
言わないだろうと思えたから。
さらに、そのあとのふたりの沈黙がその事実を物語っていた。
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