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智くんの感じからして祐希くんに協力してあげてるみたいな?不安な藍くんが可愛いのでこのまま見守りたいと思います!次回も楽しみです😄
ゆうきさん…何か企んでますねー 藍くん、もしかして思うツボ!? 相変わらず、太志さんは優しい♡
藍Side
「藍?どした?元気ないじゃん‥」
「ん‥まぁ‥」
それは練習の合間の休憩中。談笑する輪を外れ‥俺は1人隅に座り込み、その景色を遠目から眺めていた。そんな俺に声をかけてきたのは‥太志さんだった。
「どうせ祐希絡みだろ?」
図星だろと言わんばかりの悪戯な笑みを浮かべ隣に腰掛ける。太志さんも俺等の仲を知っている内の1人だ。
「わかります?」
「俺からしたらめっちゃわかりやすいよ、お前ら。朝から喋ってねぇし、何かあった?」
「それが‥理由わかんないすけど、話しかけても素っ気なくて‥」
「アイツが?」
心底驚いた表情をする太志さんの顔を見つめる。思わず涙腺が緩みそうになるのをグッと我慢した。
「信じられん‥お前に溺愛してるアイツが?」
「俺‥何かしたんかな‥」
数日前も祐希さんに会いに行き、愛を囁かれたばかりだった。愛されてる、自惚れるわけではないがその自信は確かにあった。はずなのに‥
今朝、話しかけると、
「ああ‥おはよう‥」
その言葉のみで、一切話しかけてくる事はなく‥。
まぁ‥試合も近い。その事への集中もあるだろう。そう思い、特に気にもしなかった。だが‥
その後も、話しかけてみるが‥対応は素っ気なく一言二言の会話だけで離れていってしまう‥
よく観察すると、他の奴とは笑顔で談笑しているのに。智さんなんか‥肩を寄せ合って笑い合っているやん。何故俺だけ‥‥
今も近い距離で話す2人‥まるで見せつけられているかのようだった。
「嫌われたんかな‥俺‥」
「はっ?それはないだろ。アイツに限ってそんな事。まぁ‥元気だせよ、藍。そんな悲しい顔すんなって。祐希はお前だから付き合ってると思うぞ、俺は」
ポンポンと肩を叩かれる。太志さんの顔を見上げると、優しい笑顔がそこにはあった。
「うん、そうっすよね。太志さんありがとう‥」
そうだ。俺の思い違いかもしれない。祐希さんはきっと忙しいだけや。また2人になったらいつものように接してくれるだろう。
そう思うことにした。
なのに‥
「えっ?この後?‥ごめん、藍、今夜は無理だから‥」
更衣室にて。身支度をする祐希さんに慌てて声を掛けたのだが‥
用事があるらしく、断られてしまう。
いつもなら仕方ない事だと、気にもならないのに。今日はなんだが胸がザワザワして仕方ない。
「そうっすか‥すいません‥それならまた今度‥」
その言葉を言うだけで精一杯だった。
祐希さんが出ていった後も暫くは更衣室で立ち尽くしていた。
動く気力もなく‥
太志Side
「ほら、藍食べろよ。俺の奢りだぞ!」
「じゃあ、遠慮なく頂きます!あっ、肉もう一品追加で!!」
「小川‥お前に奢るとは一言も言ってねぇぞ」
某焼肉店にて。更衣室に行くと‥1人佇む藍の背中がどうも哀愁漂っているじゃないか。表情を見ると泣き出す寸前だし‥
これを見過ごすわけにはいかない。話をしようと夕食も兼ねて誘ったわけだが‥
「うめーー!藍?全然食べてないじゃん‥俺にくれよ!」
ほぼお前が食ってるんだが‥。そうツッコミをしたくなるのは、何故か一緒についてきた小川。
誘ったつもりはなかったが。まぁ、小川も藍が気になって‥というのが理由だろうな。
小川もよく藍の世話を焼く。
「藍?食べろよ?このままだと小川が全部食べてしまうぞ」
「‥うす」
急かすのもよくないが、元気のない藍は気になってしまう。
「祐希は用事があったんだろ?大丈夫、また明日会えばいつも通りになってるさ」
努めて明るく話しかける。何でも無い事を強調するように。なのに‥横にいた小川がとんでもない事を言い出す。
「祐希さん?今夜は智さんと2人で出掛けてると思うぜ。智さんがそう言ってたから‥」
「えっ?智さんと?」
「うん、あれ?知らなかった?」
「知らない‥」
「藍は知ってるかと思った」
「智さんと会うなら‥なんで俺は断られたんやろ‥」
「断られたの?マジで?」
「うん‥」
小川の話を聞いて益々落ち込んでいく。
しかし、確かに妙ではある。智君とは旧知の仲だから一緒に出掛けるのも分かるが、それなら何故藍は断られたのか‥。
以前なら藍も連れて一緒に出掛けていたはずだ。そんな話を何度か聞いたことがある。
これは‥祐希に真偽を問わねばならないな。
「でも、良かったな、智君なら安心だろ。小川と付き合ってるし。まさか祐希も手をだすなんてありえないし」
「いや、わかんねぇよ。智さん、ああ見えて魔性だから‥毒牙にかかれば祐希さんも‥」
「小川‥わざわざ藍を不安がらせなくていいぞ。そもそも恋人だろ?手を出したらお前だって困るわけだし‥」
「冗談っすよ、明日俺からも智さんに聞いてみるから。心配要らないに決まってますよ」
それには俺も同意見だと頷き、とりあえず明日様子をみようと藍に伝えた。
“そうっすよね”‥と自分に言い聞かせるように何度も頷く藍を励まし、その日はそれで解散となった。
藍Side
「あっ、おはよー」
更衣室に着くなり智さんと鉢合わせとなる。周りにはは誰も居ない。昨日の事が瞬時によぎるが、努めていつも通りの挨拶を交わす。
昨夜は、小川さんが話を聞くと言っていたがどうしても気になる‥結局あの後も祐希さんからの連絡は1つもなかったのだ。
「あっ、あの‥智さんちょっとええ?」
「ん?なぁに?」
「昨日‥祐希さん‥と出掛けたんすよね?どこに行ったんですか?」
「祐希?‥‥‥あっ、ああ‥えっと‥そっか‥んー‥」
智さんらしくない歯切れの悪い言葉。言いにくいことなんやろか。
「智‥さん?」
「へ?あっ、あーね、昨日は、祐希の家に泊まりに行ったよ」
「は?泊まり?」
「あっ、ちが‥いや、ううん、と‥泊まった、祐希がさ泊まっていけってうるさいから‥」
出掛けるんじゃなくて‥泊まっていたなんて。予想もしていない返事に言葉が詰まる。
「そ‥それで‥泊まって‥なにしてた‥?」
みっともないぐらいに声が震えるが、今はそんな事気にしてる余裕すらない。
でも、智君なら ”何にもないよ、あるわけない”と笑って言ってくれる気がしていた。
取り越し苦労だと‥。
だが‥
「何してたって?‥‥‥‥んと、藍には秘密、」
「えっ‥」
「そう、藍には秘密だわ、ごめん」
「なっ、なんで‥」
そう言いかけたが‥更衣室のドアが開き、わらわらと人が押し寄せる。その中には祐希さんの姿も見受けられる。
「あっ、じゃあ‥藍‥そういう事だから、俺行くわっ」
そそくさと離れていく智さんを、それでも引き留めたかったが‥すぐさま祐希さんの元に駆け寄る姿を見てしまうと‥
なんにも言えなかった。
秘密‥
俺には秘密なんや‥
その言葉だけがループしていた‥
ぐるぐると‥