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「いいんですよね? もう後戻りは出来ませんよ、先輩」
この状況に興奮しているのか、いつもと違い少し擦れて聞こえる彼の声。
十年以上前と変わらず私を先輩と呼ぶのは、学生時代の癖が抜けないからだろうか。互いに三十を超えいい大人になったというのに、この呼び方ひとつで心が乙女だった頃に戻っていくような気がする。
これでいいのか、それとも良くないのか。私はまだその答えを出せないまま、この身を学生時代の後輩である奥野奥野 雅貴雅貴に任せようとしている。
こうすることで私は楽になることが出来るのか、それともまた別の苦しみに頭を悩ませる事になるのか。
正常な判断もままならず、白いワンピースのリボンを解く夫とは違う男の手に見惚れていた。