父さんが思い切り灰皿を振り上げた
殴られる…!
俺は咄嗟に左に体を晒す
ゴッ
床に灰皿が思い切り叩きつけられる
鈍い音。あんなので殴られたら死んでしまう
「にげるなよぉ゛?湊ぉ゛」
[や、やめて!父さん…し、死んじゃうよ、!]
大きな声で言っても聞く耳を持ってくれない
父さんはもう一度俺の方に向かって灰皿を振りかざした
あぁ、俺ここで死んでしまうのかな
俺のせい…、なんだ、よね
きっと、
自業自得なのかな…
嫌だ
死にたくない
俺は、まだ、
生きたい
明那と一緒に生きたい
幸せになりたい
「今度ははずさねぇぞぉ゛!湊ぉ゛!」
[いやっ…、]
その時だった
『 ふわっち!!』
突然聞こえた声
この声は、
『 ふわっち!無事でよかった、』
聞き慣れた声
愛おしい声
声のする方を見ると
明那が立っていた
「あぁ゛?!何勝手にはいってきてんだよぉ?゛!」
『 あなたこそ、なに、やってるんですか!』
「これは教育だよぉ゛!?湊もこれを望んでたんだよぉ゛!?なぁ゛?湊ぉ゛?」
「何の取り柄もないお前を俺が正してやってるんだよなぁ゛?」
[、…ちがっ]
『 ふわっち、ここから逃げよう』
「あぁ゛!?湊はずっとここにいるんだよぉ゛」
「湊もそれを望んでるだろぉ゛?なぁ゛!」
[お、俺は、]
怖い。でも、でも
『 ふわっち、』
[!]
『 もう我慢しなくていいよ、自分の本当の思いを教えて?』
ほんとの思い…?
俺は明那と、
幸せに暮らしたい
ここから出たい
明那…
[ここから連れ出して]
『 よく言った』
それから俺たち2人は逃げ出した
殴られた後だらけのボロボロの体を
明那は必死に支えてくれた
嬉しかった
『 ふわっち、まだ傷痛む?』
『 ふわっち、肩使って』
『 もう大丈夫だから』
優しい人
ねぇ明那
俺の思い全部聞いて
ほんとはね、
[ほんとは、俺が全部悪いだなんて思ってなかったんだ]
ぽつり、ぽつりと辿々しく言葉を綴る
[家庭が崩壊したのだって、
母さんが浮気をしなければって、
父さんが暴力を振るわなければって、
でも、俺が全部悪いって思わないと
今の状況を耐えられなかったんだ
殴られるのだって、俺のせいだって思わないと
死んでしまいそうだったんだ]
ずっと、自分で自分に嘘をつき続けた
それで自分を守っていた
本当は被害者ぶってるだけだった
[こんな俺でも、助けてくれて、ありがとう…]
『 ふわっち、俺の思いも伝えるね』
『 俺、ふわっちが好きだよ』
え、
『 高校に入った頃からずっと、ずっと好きだよ。 家族のことで悩んで、1人で戦ってるところも、弱ってる姿も全部ひっくるめて大好きだよ』
明那が俺のことを好き…?
『 今度こそは、俺が守っていくから。支えていくから
俺と付き合ってほしい』
こんな夢のようなことあっていいのかな
隠してた思い
[俺も明那が好きだよ]
ずっと大好きだよ
[へへ、]
『 何その笑い方笑』
[いやーなんかすごく今
幸せだなって!]
𝑯𝑨𝑷𝑷𝒀 𝑬𝑵𝑫 救出