⚠この話は佐古×守若の続編です
読んでいない方は1話目からお読みください
一人称が、オレ=佐古大和、おれ=守若冬史郎としてお読みいただければ幸いです
オレは走って守若の兄貴を追いかける。
いつもの兄貴なら「早く来ぉい、ブッコロスぞー 」と超絶物騒な事を言いつつおれが追いつくまで待ってくれるのに、今日は振り返りもしない。
まさかマジギレしているとか!?
もしかしたらオレは殺されるのか?
思わず気後れして走って追いかけていた足が止まってしまうと、10メートル程先にいた兄貴も立ち止まって軽く振り返る。
守「佐古ぉ、早く来いー」
口調はいつも通りだったが、兄貴はオレを待たずに早歩きで再び歩き出してしまった。
佐「ひぃい、待って下さい~」
やっぱりいつもと違う。
殺気こそ無いが、何だか拒絶されているような気がした。
結局守若の兄貴はその後も言葉少なく事務所に帰って来てしまった。そしてオレは仙石の兄貴に用事を言いつけられて、数時間後に帰って来た時にはもうその姿は見えず、その場に居た久我の兄貴に聞いてみる。
久「守若の兄貴ぃ? 今日はもう帰って行ったな」
佐「そう、なんですね」
露骨にガッカリしてしまって久我の兄貴は驚く。
久「いつもだいたい守若の兄貴がお前に絡むのに珍しいよな、そういえば守若の兄貴も今日は何か変だったな……しきりに左の首元を押さえて唸ってたし」
佐「え」
驚いているオレに構わず久我の兄貴はそのまま続ける。
久「そういえば少し赤くもなっていたし……佐古、もしかしたら守若の兄貴は風邪でも引いたのかもしれねえ。今日はもう終わって良いから、兄貴にメシとかの差し入れでも持って様子を見に行って来い」
佐「は、ハイ!」
久我の兄貴の命令の命令にオレは姿勢を正す。
急いで帰りの準備をして組事務所を出た佐古の後ろ姿を見送りながら久我は首を捻った。
久「でもあの守若の兄貴が風邪なんて引くのか?」
そう呟く。ウィルスや細菌の方が守若の兄貴を避けそうだと思ったが、それを言ったら守若の兄貴に殺されるかもな、と苦笑したのだった。
久我の兄貴に言われたとおり、守若の兄貴のために食材やスポーツドリンク、額に貼る熱冷ましなどを購入して彼の家へと向かう。
オレのポケットには以前念のためにと渡された部屋の合鍵。それを愛しく撫でる。
勿論非常用だが、とても嬉しかった。
赤くなって首元を押さえていたという事は、もしかして昼間の事を意識していたとか?
オレの足は自然と軽く、夕焼けの赤さに兄貴の照れた顔を重ねながら彼の家を目指すのだった。
守「何だぁ、これ?」
おれ、守若冬史郎は今日あれから、気がつけば左の首元を押さえてしまう。
体が妙に熱く火照る。
そこは昼間佐古に軽く噛まれた所だった。
噛まれた所からじわじわと熱を持って体全体へと広がっているようで妙な感じだ。
早めに帰らせてもらったが、やっぱり収まらない。
守「あいつ、変な菌でも持っていたんじゃないだろうなぁ……おれが熱でも出したら伝説の男は終焉だぁ」
そんな物騒な事を考えながら、シャワーに入ってさっさと寝る事にした。
結局シャワーに入っても火照りは引かず、おれはベッドに入ってうつぶせになるとすぐにウトウトして意識を手放した。
ふと、スマホが鳴って眠いながらも手を伸ばし、表示を確認して通話へとスライドする。
何か言われて、自分も何かを返事したような気もしたが、再び意識は闇に落ちた。
額にひんやりした感触がして、おれの意識は急速に覚醒した。
自分の額に当てられた誰かの手の裾をとっさに掴む。
守「……あ、れ? 佐古……?」
一瞬ピリッと張り詰めた空気になったが、守若の兄貴の緊張はオレの姿を認めてふわりと和らぐ。
佐古はおれに経緯と体調確認をして、額に熱冷ましのシートを貼ってくれて、スポーツドリンクを渡して、食事の用意をするからと部屋を出た。
汗をかいて気持ち悪かったが、まだ眠気があり体が重かったので大人しくスポーツドリンクを飲んでごろごろしているといつの間にか、眠ってしまっていた。
その後、美味しそうな匂いに目が覚めたおれは佐古が用意してくれた寄せ鍋を食べて満足した。
守「汗かいて気持ち悪い、シャワー入って来るからもう帰って良いぞぉ」
と佐古に伝える。食べてかなり体調が良くなったからだ。
そしたら佐古は親父命令で明日から3日休みを取れと言うではないか、しかも佐古は体調管理のためにおれから目を離さないように言われたとか。
いがおやじの言い付けなら、仕方がない。
おれはとりあえずシャワーを浴びに浴室に入ったのだった。
続きます、次は佐古視点です







