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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第30話 〚昼休みの小さな噂〛(学校の日常)
昼休みの教室は、いつもよりざわついていた。
給食を食べ終えたあと、それぞれが机に集まり、小さな輪を作っている。
その中の一角で、
クラスメイトの男子数人が、机の下で何かを操作していた。
「今のターン俺な」
「静かにしろって」
小声で交わされる言葉。
スマホの画面が、一瞬だけ光る。
——ピン。
その音を、担任は聞き逃さなかった。
「……こら」
低く、はっきりした声。
男子たちは一斉に固まる。
「昼休みでも、校内でのゲームは禁止だ」
担任はスマホを指さした。
「没収はしないが、次はないぞ」
男子たちは「すみません」と頭を下げ、
慌ててスマホをしまった。
その様子を、教室中が見ていた。
「中学校なのにスマホ使えるの、地味に便利だよね」
後ろの席から、ひそひそ声が聞こえる。
「連絡とかさ、親ともすぐ取れるし」
「部活の集合時間も確認できるし」
「正直、ないと困るかも」
噂は、静かに広がっていった。
澪は、自分の席で本を閉じ、
その会話を耳に入れながら、少し考える。
——スマホ。
連絡手段。
位置。
時間。
便利なものは、
守るためにも、使える。
同時に、
使い方を間違えれば、
簡単に“繋がりすぎてしまう”ものでもある。
澪の胸が、ほんの少しだけざわついた。
(……今は、何も見えない)
心臓は、静かだった。
でも、
何気ない日常の中に混ざった「便利」という言葉が、
どこか引っかかる。
その一方で。
教室の後ろ、窓際。
恒一は、何も言わずにその光景を見ていた。
——スマホがあれば。
連絡も、
誘導も、
偶然も、作れる。
彼の口元が、わずかに歪む。
昼休みの、ほんの小さな出来事。
けれどそれは、
誰も気づかないところで、
次の動きに繋がっていく。
静かな日常の中で、
また一つ、
歯車が回り始めていた。