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放課後、七瀬は親友の沙也加と一緒に、近くのカフェでプリンを食べていた。
笑いながらスマホを触る沙也加を見て、七瀬も少し安心していた。
「今日は久しぶりに、学校のこと忘れて遊べるな」と思っていた矢先、スマホが震える。
「美咲……?」
通知を開くと、そこにはLINEの連続メッセージ。
『今どこ?誰といるの?』
『返してよ、既読無視やめて』
『さっきからずっと待ってるんだけど』
七瀬の胸がぎゅっと締め付けられる。沙也加に気づかれないように、手を震わせながらスマホを閉じる。
「う、うるさい……」
沙也加が首をかしげる。
「どうしたの?」
七瀬は笑顔を作った。
「なんでもない……ちょっと連絡が来ただけ」
けれど心の中では、嫌な予感が渦巻いていた。
美咲のことを避けるたびに、彼女の返信はますます怒りや不安を帯びてくる。
「なんで返してくれないの!?」「誰といるの!?」「なにしてるの!?」
七瀬はカフェで笑っている沙也加の顔を見ながら、次第に息苦しさを感じる。
「また怒ってる……私、何か悪いことした?」
カフェを出ると、スマホが再び震える。
今度は電話。迷った末、出ることにする。
「……七瀬、なんで返してくれないの?今日ずっと待ってたのに!」
美咲の声は切羽詰まっていて、どこか恐ろしい響きがあった。
七瀬は言葉に詰まる。
「……ごめん、今日は沙也加と遊んでて」
「えっ……!?」
美咲の声が一瞬、怒りと困惑で震えた。
「じゃあ……私より…私より沙也加の方が大事ってこと?」
七瀬の胸が痛くなる。沙也加との時間は大切だけど、美咲のことも傷つけたくない。
どう答えればいいのか、全く分からなかった。
「ち、違う……そんなことない」
言ったものの、声が震えてしまう。美咲の重い沈黙が、電話越しに伝わってくる。
その夜、七瀬はスマホを手に握りしめながら眠れなかった。通知音が怖くて、恐る恐る画面を覗く。
既読になったままの返信は、七瀬の胸を締め付ける。「もう、どうして……」
美咲は、ただの「友達」じゃなくなっていた。
七瀬は、自分が知らないうちに縛られてしまっていることを、痛いほど感じていた。