テラーノベル
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無数の針が、空から突き刺さってくるような雨の日にわたしたちは出会った。
ジュノンside
仕事帰り、少し気持ちが落ち込んでたから
繁華街でも行って雰囲気だけでも明るくなろうと思ってた。
空から無数の水が降ってきて、服がじわじわ重くなっていく。
ついてないな…なんて考えながら歩いていた。
そんな中、目の前に見るからに場違いな子が立っていた。
傘も差さず、ただ立ち尽くしている。
人の流れの中で、そこだけ時間が止まっているみたいだった。
こんな夜に、なにか事情でもあるのだろうか。
一瞬、通り過ぎようとして――
でもどこかほっとけなくて。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけ俺のことを見上げたその子は
華奢で、純白みたいな肌の色で、
少し茶色がかった目が、雨に濡れてやけに綺麗だった。
『大丈夫…です。』
少し甲高い声でそう言って、立ち去ろうとする。
このまま見送ったらきっと後悔する。
何故かはわからないが確信があって_。
気づいたら手首を掴んでいた。
今この瞬間に初めて会って、
なんの関わりもなかった俺たちなのに、
何故か、放っておけなかった。
「……おれんち来なよ。」
そういうと、
雨音に紛れて、彼女がいっしゅん息を止めたのがわかった。
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半ば強引に家に連れてきて 、
玄関に入った瞬間、彼女の足元に水滴が落ちた。
全身から水が滴るほど濡れている彼女にタオルを渡す。
「ごめん、急に。」
冷静になって考えたら、
こんな真夜中に男の家に連れ込まれるなんて恐怖でしかない。
喉の奥が少し苦くなって、自分の軽率さを反省する。
『別に…気にしてないです。』
そう言われても、
なにを話せばいいのかわからず沈黙が落ちる。
「なんで、あんなとこにいたの?」
『特に理由はないです。』
短い答えで、これ以上踏み込まれたくない。
そんな線が見えた__。
「年齢は…?」
『18歳…です。』
質問ばかりになってるな、と思った瞬間__
『なんで…わたしに声かけてくれたんですか?』
少し気まずそうに、でもちゃんと俺の目を見て話しかけてくれた。
その視線に、胸の奥が不思議と軽くなった。
落ち込んでた気分なんて、もうどこにもなかった。
「気づいたら声かけたから、?」
『なんで疑問形なんですか…笑』
小さく笑う彼女を見て、
冷たそうに見えた印象が、ふっと崩れた。
この空気が妙に心地よくて。
「おれ、出会ったばっかりだけどきみのこと好きになっちゃった。」
『へ……?』
驚いた顔。
ゆっくり頬が赤くなっていくのがわかって、
思わず息を飲む。
可愛い、なんて軽い言葉じゃ足りなかった。
「おれ樹音。なまえなんていうの?」
『〇〇…です。』
「〇〇ね。樹音でいーよ、呼び方。」
淡々と進む会話に追いつけないのか、
彼女の首が少しずつ傾いていく。
その仕草すら、目が離せなかった。
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