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リオは、ずずっと鼻をすすりながらギデオンを見上げた。
「ギデオン…ごめん。俺を置いて先に行っていいよ。行き方を教えてくれたら、後で行くから」
「バカめ。病人を置いて行けるか」
「でもさ、俺、ずっと足でまといじゃん。本来なら、もう着いてるはずなのにさ…」
「俺がリオに来てくれと頼んだのだ。気にするな。おまえは自分の体調だけを心配していろ」
そう言い終えるなり、ギデオンがリオを抱えて立ち上がる。
リオが慌てて地面に置いたアンに向かって手を伸ばすと、アトラスがアンが入った鞄を抱き上げた。
「リオ、この子は俺が抱いてようか?」
「いや、大丈夫だよ。アンは俺じゃないとダメだから…」
「そうなの?アン、リオのところに行きた…」
アトラスが言い終わる前に、アンがリオの胸の中に飛び込んできた。「アン!」と鳴いて、リオの顎をぺろぺろと舐める。
「ふ…ふふ、くすぐったい。今、吐いてたから汚いぞ」
リオが手で遮ると、今度は手のひらをしつこく舐め始める。
その様子を見て、アトラスが困ったように笑う。
「リオのことが大好きなんだなぁ。アンは可愛いから、俺も抱いてみたかったんだけど…残念」
リオは顔を上げてアトラスを見る。
アンを可愛いと言われて嬉しい。自分のことを褒められるよりも嬉しい。きっともう、アンはリオの中で何よりも大切な存在になっているから。
リオは、アンの黒い鼻先に自身の鼻をつけて、「おまえのこと、可愛いだって。よかったなぁ」と笑った。
そしてギデオンを見て、早く行こうと口を開きかけた瞬間、全身に鳥肌が立つ。
あ、これはヤバいやつだ。半年に一度の割合で来る、最高に体調が悪くなるやつだ。これになると、丸一日は動けない。一人の時は、宿の部屋にこもってひたすら寝ていた。今は目的があって移動してる最中だから、一人じゃないから、ひたすら寝ているわけにもいかないのに。皆にもっと迷惑かけちゃうなぁ。
リオは申しわけない余り、また泣きそうになったけど、なんとか耐えた。しかし口を思いっきり曲げたために、ギデオンに変な顔をされてしまう。
わかりにくいけどギデオンは表情豊かだな…と、ぼやけてきた視界で男の美しい紫の目を見る。そして「どうした?」という低音の心地よい声を聞きながら、リオは目を閉じついに意識を手放した。