テラーノベル
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〜注意事項〜
・この作品はwrwrd様の二次創作です
・本人様とは関係ありません
・検索避けに協力してください
・軍パロ、怪我表現等が含まれます
◇◇◇
薄曇りの空の下、軍の臨時拠点は着々と整備されていた。
鉄のフレームが組まれ、布の屋根が張られ、兵士たちの掛け声が飛び交っていた。
まだ基地にいるciは、外交官用の机に座り、淡々と書類をさばいていた。
横顔はいつも通り穏やかに見えるが、その指先だけが微かに震えている。
「ci、起きてるのか」
後ろから聞こえた声に、ciは振り向く。
そこにはtnがいた。
書記長らしい落ち着いた姿で、だがその目だけは、昔のままの優しさを宿している。
「もうすぐ出発やぞ。今回の拠点、あそこに決まった」
ciの手がぴくりと震える。
「あそこ…?」
「そう。…お前の村の隣の谷や」
tnは一瞬だけ言葉を止め、続けた。
「大丈夫か?あれやったら、配属せずに、待っててもええぞ」
ciは首を横に振る。
「…大丈夫。もう、昔のことやから」
だが胸の奥では、雷のように心臓が打ち続けていた。
ciが軍に入隊したのはそれほど立派な理由ではない。
ciの家は、いわゆる毒親と呼ばれる家庭であった。
小さい頃から、家事やら何やら押しつけられて、怒鳴られて、殴られて。
それは、親がciを嫌っているからではなく、誇りに思っているからである。
世間からの目を気にしていた母親は特に、ciを立派な大人に、皆から羨ましがられる息子にしたがっていた。
ciは、そんな母親に反抗する勇気もなく、ずっと言う通りにできない自分が悪いと、思い込んでた。
tnが来たのは、その頃だった。
親に頭を冷やせと家を追い出され、雨の中座り込んでいたciを、tnが見つけた。
「一緒に来ないか」って誘われたが、一度断った。
軍なんて怖そうだった。
自分が役に立てるはずないと思ってた。
けれど、その日はいつもより家でひどく殴られて、気がついたら荷物も持たずに外に追い出されていたものだったから。
何度も勧誘してくれるtnに、縋ってしまいたくなった。
半分、家出みたいな形で、tnの手を取った。
それで軍に入った。
最初は毎日、怖くて泣きそうだった。
自分なんかがここにいていいのかと。
今も時々思うことはある。
自分は本当は、誰かを守れるほど強くないんじゃないかと。
けれど、ここに来て、みんなに助けられて、ずっと助けられて。
ようやく、自分にもできることがあるかもしれないって思えるようになった。
というよりかは、自分で恩返しをしたいと思うようになった。
できる限り頑張りたい。怖くても、弱くても。
ここの居場所は、どこよりも心地よいと知れた。
だからこそ、ciは毎日を全力で過ごしている。
自分はやれるはずだ。
ciは肩をすくめ、マグカップの湯気を見つめた。
◇◇◇
夕暮れ。
基地の端にある小さな通路を、ciはひとり歩いていた。
目を閉じると、土と雨の匂いとともに、遠い記憶がよみがえる。
狭くて湿った台所。タバコの煙。ヒールの音。
誰かが怒鳴る声。
子どもの頃からずっと続いていた光景。
頭の奥で、遠い昔の声が響く。
『あんたが弱いからaくんのお父さんに呆れられたじゃないの!!!』
『出てけ!優秀な子しか、いらない!!』
『でしょう?うちのciくんは優しいのよ。ええ、自慢の息子だわ』
酒瓶が飛ぶ音、床に散るガラスの音。
時折、嬉しそうな猫なで声。
そのたびに心臓が小さく跳ねる。
「ci」
shpの声が後ろからしたが、ciは気づかないふりをした。
胸がざわざわして、誰の顔も見られなかった。
臨時拠点へ行く車列の中、ciはshpと並んで座っていた。
shpは足を組み、ペンを振っている。
「大丈夫?」
shpが横目で見てくる。
「平気」
ciは笑って見せたが、その笑顔は紙のように薄い。
「さっき声かけたの、気づかんかったん?」
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「…そ。」
shpは何も言わずにciの肩に頭を預けた。
車列が村に近づくにつれ、懐かしいような、嫌な匂いが風に乗ってくる。
ciは息を詰めた。
胸の奥にしまっていた何かが、今にも暴れ出しそうだ。
拠点の設営が始まった。
各隊が忙しそうに動く中、ciは外交官として村の有力者たちと交渉に当たっていた。
村人たちの視線が冷たい。
「あいつ、あの家の子じゃないか」
「軍に入ったって噂は本当だったんだな」
「あの母親、壊れたよなあ。自慢の息子とか言ってたけど、暴力してたらしいし」
そんな声が聞こえる気がする。
ciは表情を変えずに、ひたすら書類に判を押した。
そこにshpがやって来た。
「今日はもう休んでいいって」
「まだ仕事が残ってる」
「ci…」
「大丈夫」
ciは同じ言葉を繰り返し、手元の書類をにらみ続けた。
◇◇◇
その夜。
風が急に冷たくなり、テントの布がぱたぱたとはためいた。
その音に紛れて、低い笑い声が忍び寄る。
「ふふふ…ようやく見つけたわよ」
突然、テントの入口が乱暴に開かれた。
そこに立っていたのは、ciの母親だった。
髪はぼさぼさ、両手に酒瓶、口元からタバコの煙を吐き出している。
目は異様にギラつき、頬はこけ、だがその足取りは驚くほど速かった。
「ciくん〜!あたしのかわいい子〜!」
母親は叫びながら中に飛び込んできた。
その場の空気が凍る。
ciはその声を聞いた瞬間、身体が硬直した。
椅子から立ち上がることもできず、ただ毛布の端を握りしめる。
shoがひょいと顔を出し、「誰この人…」と呟く。
zmが「たぶん、ciの…」と答えるが、言葉が続かない。
母親はテントの中を見回し、ciを見つけると、満面の笑顔を作った。
「ciくん!!お母さんが迎えに来たわよ!!帰るわよ!!!!」
次の瞬間、今度は鬼のような形相で軍服の袖を掴もうと突進してきた。
tnが間に割って入り、両腕を広げる。
「この拠点は軍の管理下にある。勝手な立ち入りは許可しない」
「なによッ!!あんた誰!!!あたしの子に触んないでよォ!!!!」
母親は酒瓶を振り回し、床に酒が飛び散った。
その匂いだけでciの頭がくらくらする。
rbが慌てて周囲の装備を下げる。
母親はタバコをくわえたまま、「返せ!返せ!」と繰り返し、テントの柱を叩く。
煙が充満し、咳き込む声があちこちで上がった。
grがゆっくり立ち上がり、低い声で「この女を外に出せ」と命じる。
だが母親は構わず、ciに向かって「帰るのよ! あんた、こんなとこにいたら死んじゃうのよ!!!!」と叫び続ける。
ciは声が出なかった。
胸の奥がぎゅっと縮こまり、耳鳴りだけがする。
ただ怯え、肩をすくめることしかできない。
「やめろってば!」
shpが立ち上がり、母親の腕を押さえようとするが、母親は予想外に力が強い。
母親はなおも喚きながら、今度はテントの備品を蹴飛ばし始めた。
「うちの子を奪った罪で全員捕まえるんだからァ!!!!!」
目は血走っていた。
その隙にciは立ち上がろうとするが、足がもつれ、うっかりこぼれた酒の中に倒れ込んだ。
強烈なアルコールが喉を焼き、視界が揺れる。
「ci!!!!」
tnが駆け寄る。
「やめろ、今は動くな!」
母親がさらに詰め寄ろうとした瞬間、zmが背後から素早く取り押さえた。
shoとknも加わり、母親の両腕を後ろに回して拘束する。
「放せぇぇぇ!!あたしの子なんだからァ!!」
「子どもを殴り飛ばすような人間が、親を名乗るな」
zmが低く言う。
shoが「はいはい、お縄ね」と苦笑しながら手錠をかける。
ciは声が出なかった。
身体が固まり、視界が狭まる。
手が小刻みに震える。
喉の奥からひゅうひゅうと息の音がするだけだった。
「返せ!!あの子はあたしの息子よッ!!」
母親は最後の抵抗に酒瓶を投げつけた。
酒瓶はciに向かって飛び、頭にガンッとぶつかった。
その拍子に、酒瓶の中身がciにかかる。
勢いで口の中にドバッと流れ込む酒を、ciは一気に飲み込んだ。
強いアルコールの匂いが鼻と喉を焼く。
頭がぐらぐらして、世界が回る。
「け"ほ…ッ、ぁ、あぁ”」
声にならない。
ただ、怯えた目だけが母親を見ていた。
体が冷たくなり、震えが止まらない。
視界の端が暗くなり、気がつけば全身の力が抜けていた。
「ci!!!!」
shpが抱き上げる。
「大丈夫、大丈夫!!!!」
その瞬間、tnが飛び込んでいく。
「いい加減にしろッ!!!!!!!」
怒声とともに、他の幹部たちも突入する。
grが母親を一瞥し、「国外追放の手続きを」とemに告げる。
母親はまだ喚いていたが、zmとsho、knにtnが無言で引きずって行く。
「放せェ!!あんたら全員、地獄に落ちるんだからァァ!!!」
その声は次第に遠ざかり、夜の空気に吸い込まれていく。
外ではemが待ち受け、冷たい視線で「国外追放の手続きや」と淡々と告げていた。
母親はなおも罵声を浴びせ続けていたが、手早く車に押し込まれ、遠くの検問所へ連れて行かれた。
◇◇◇
テントの中に静寂が戻る。
ciはshpの腕の中で、小さく身を丸めていた。
こぼれた酒の匂いだけが、じっとりと床に染み付いている。
ciはぐったりと項垂れていた。
瞳は虚ろで、声も出ない。
手の指先まで震えている。
「ci…もう大丈夫やからな」
shpは子どもをあやすように背中を撫でる。
utが横に膝をつき、「俺らが守るからな」と優しく声をかけた。
snは即座に診察器具を取り出し、ciの瞳孔と呼吸を確認する。
「アルコールがかなり入ってるけど、致死量ではない。水分と安静が必要やな」
落ち着いた声だったが、その目は明らかに怒っていた。
恩返しをするんじゃなかったのか。
shpは顔を近づけ、「俺がそばにいる。やから眠っていいよ」と囁く。
ciの頬に一筋、涙が伝った。
snが毛布をかけ、静かに言った。
「今夜はここでciを休ませよう。警備は倍にする。あの女はもう戻れないが、ciの心が落ち着くまで時間が必要や」
ciはようやくまぶたを閉じ、震える息を吐いた。
腕の中で小さく丸くなり、ゆっくりと浅い眠りに落ちていく。
しばらくして、tnらが戻ってきた。
shpの腕の中で眠るciを見て、グッと唇を噛む。
「なんで…なんでこんなことになるんや」
shoが床に落ちた酒瓶の破片を拾いながら呟く。
「ci、ずっと震えてるじゃん、」
「ここまで怖がるとは思ってなかった」
zmも拳を握りしめる。
「親だからって、手加減するべきじゃなかった」
tnがそっとciの手を握った。
「大丈夫や。もう誰もお前を連れて行ったりしない。ここは安全や」
shoが小声で「ci、俺たちがついてるからな」と言い、zmも無言で頷いた。
寝顔はまだ怯えの影を残していたが、shpとtnが両側で支え、snが脈を取り続ける姿は、まるで壊れ物を守る騎士たちのようだった。
テントの外では、母親を乗せた車が暗闇に消えていく。
その方向を見つめながら、emは低く言った。
「国外追放で済んだのは奇跡やな。もう二度とciくんに触れさせない」
grが静かに近づき、腕を組んだままテントの中を見回した。
「この騒ぎは、必ず私が処理する。ciには何の罪もない。お前たちはただ、そばにいろ」
一同は無言で頷いた。
テントには重い沈黙が戻り、外の夜風が幕を揺らす。
その音が子守歌のように、ciの浅い眠りを包み込んでいった
◇◇◇
暗闇の底から、かすかな光がにじんでくる。
まぶたが重い。
頭の奥がまだじんじんする。
ぼんやりと聞こえてくる声に、何度か瞬きを繰り返す。
「…ci起きた?」
「落ち着いて、もう大丈夫やからな」
ciはゆっくりとまぶたを持ち上げた。
視界に映ったのは、見慣れた軍医室の白い天井だった。
消毒薬の匂い、やわらかな毛布の感触。
頬に触れる手があった。shpだ。
tnも心配そうに覗き込んでいる。
「ci…良かった…」
shpの声は震えていた。
ciは反射的に身をすくめた。
肩が跳ね、指先が毛布を掴む。
声が出ない。
胸の奥で小さく、ヒュウッと空気を吸い込む音だけが鳴る。
「もういない。お前の母親は、ここにいない」
tnが静かに言った。
その声は普段より低く、柔らかい。
「拘束した。軍法に則って国外追放された」
ciの唇がかすかに動いた。
「…ほんまに?」
掠れた声が漏れる。
tnは頷いた。
shpがciの手をそっと握る。
「もう大丈夫。ここはciの場所やから」
それでもciの瞳は怯えたままだった。
母親の大声、酒の匂い、腕を掴まれた感触が、まだ皮膚の下に残っている。
まるで体温が下がっていくように、全身が冷えている。
その時、部屋の扉がそっと開いた。
grとzm、sn、shoが入ってくる。
いつもの賑やかさはなく、全員、足音を忍ばせている。
shoがぼそっと「酒くさくない空気、ありがてえ」と呟くと、zmが肘でつついた。
「しーッ」
grがベッド脇に膝をつき、静かに言う。
「ci、私たちが守ってる。誰にも触らせない。だから安心して休んでいいゾ」
その声は、戦場のどんな怒号よりも穏やかだった。
ciの胸の奥で、何かがほろほろと崩れた。
涙ではない。息だ。
小さな息が何度も喉を震わせる。
「…うん」
ようやくそれだけを言えた。
shpがそっと毛布をかけ直す。
tnが静かに見守る。
zmやshoは、ふだんなら冗談を飛ばすところを、ただ無言で立っていた。
それが逆に、ciには心強かった。
外ではまだ、風がテントを叩いている。
だがこの小さな部屋の中は、不思議なほど静かで、暖かい。
ciは震える指先で、shpの手を握り返した。
それは小さな動作だったが、皆の胸に小さな安堵が広がった。
「…ありがと、」
そのかすかな声が、部屋に溶けていった。
その夜、ciはうなされながらも、もう母親の声ではなく、仲間たちの笑い声を夢に見た。
誰も騒がず、ただ静かに、そばにいてくれる気配。
怯える心を包む、やわらかな何か。
それを確かめるように、ciは眠りの中で何度も毛布を握り直した。
◇◇◇
病舎の個室を出られるようになった日、ciは杖をつきながら中庭に出た。
まだ動きはぎこちないが、頬にあたる風が気持ちよかった。
ここまで戻ってくるのは、長かった。
そう思ったところで、いきなり背中にドン、と何かが当たった。
「ci〜ッ!!!!」
顔を上げると、shoが全速力で駆けてくる。
その後ろからうるさい笑い声を立てるknとzmが追いかけてきて、さらにその後ろからパンを抱えたutがよろよろ現れた。
「バカ、sho!!怪我人に体当たりすんな!」
「わかってるってば、ぎゅーってするだけやから!!」
shoはそのままciの腕に絡みついてきた。
ciはバランスを崩しそうになりながらも、思わず笑ってしまう。
「もうっ…元気やなみんな」
中庭の一角には、すでに小さな即席のピクニックシートが敷かれていた。
tnが書類を脇に置き、grが珍しく甘いものを大量に用意している。
osは外交の合間に仕入れてきたらしい海外のキャンディを袋ごと持ってきていた。
shpもem達と話しながら座っている。
「ci、ここに座れ。風が気持ちいいぞ」
tnが笑い、shpがciの肩を支える。
utは大きな袋から焼き立てのパンを取り出し、「特製やぞ。はよ食わせたかった」
とぽつりと言った。
その一言に、ciは胸の奥がきゅっとなった。
utはすぐに明るい笑顔を浮かべ、「ようやく今日はciの快気祝いやからな!」と声を張った。
「いや、快気祝いって…まだ全然やけど」
「いいんだよ、元気づけるためのお祭りなんやから」
osが楽しそうに笑う。
「ciくんの好きなやつ、ここにあるよ」
htは甘い飲み物を差し出してきた。
みんながわちゃわちゃと話し、笑い、パンをちぎって口に運びながら、ciの両肩から力が少しずつ抜けていくのが自分でも分かった。
あの日のことはまだ消えないが、こうやって、みんながいる。
「ci、食べろ食べろ」
grが手ずから焼き菓子を差し出してくる。
「いや、総統自ら…」
「俺が食わせたいだけだゾ。文句言うな」
横でosが「外交の場でもこれくらい素直ならいいのに」と笑うと、全員がどっと笑い声を上げた。
grは拗ねたようにそっぽを向く。
その笑い声に包まれ、ciは深く息をついた。
頬に風があたり、太陽の光が目にまぶしい。
ほんの数週間前まで、血の匂いと叫び声しか思い出せなかったのに、今は笑い声の中にいる。
ciはゆっくりとパンをちぎって口に運び、皆の顔を見回した。
「…ありがとう。みんな」
その声は小さかったが、確かに届いた。
shpがにやっと笑い、tnが頷き、utが明るく「当たり前やろ」と言った。
わちゃわちゃとした温かい時間が、あの記憶で凍りついていたciの心を、少しずつ解きほぐしていった。
リクエストありがとうございました😘😘
コメント
5件
sypさんとtnさんがciさんを守ってるところガチでかっこいい!あと、しんみりした後にshoさんがciさんにぎゅーーってするところちょーかわいい♡最後のパンのくだり前回のパン屋のやつ?気のせい?
emさんが静かにキレてるのよすぎる zmshoの真面目なところ最高 最後のほんわかした空間好きまざりたい 最後のパンで前続き書いてた話思い出した
あたすがリクエストしたやつだ…最高かよー!!解き放たれた感あってうれぴぃ