テラーノベル
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ある日、僕が街を歩いていると、大人しくし座っている…片目がガラスの、黒猫を見た。 不思議な物を感じたと同時に、全てを見透かされたようで少し…背筋が寒くなった。
「何を見てるの?早く行こうよ」
友達は言った。まるで何も見えていないような顔をして、首を傾げながら。
「……そうだね」
返事をして、黒猫を避けるように歩く。これが、幻でも…踏むのは少し、罪悪感がするから。
「にゃ〜」
とだけ鳴いて、黒猫は茂みに消えていった。その場、何もなかったように…時は過ぎていく。
次の日、
また同じ所を、一人で歩いた。やっぱりそこには、黒猫がいて。……黒猫は、僕を見た。ガラスの目に映る自分が、何故か嫌に…歪んでいる気がした。
「……早く、行こう」
半ば自分を落ち着かせるために呟いて、黒猫を避けて、仕事場に行く。…今日は黒猫は、鳴かなかった。
仕事場。上司がうるさい仕事場だ。ここに来るだけで空気が重くなったのを感じる。
「っ……!?」
何で…上司の顔が…………黒いんだ?
「な、なぁ…」
同僚に声をかける。
「なんだよ」
不思議そうに首を傾げた。
俺だけ、なのか?見えているのは…。いつものあの、汗がじっとりとついて、鼻が丸い、見てるだけで苛つくような顔が、今日は見えない。それに、怒鳴り声すら、遠いように感じる。
(何でだ?)
不思議に思いながらも、前よりマシだと感じる。世界が静かなら、それに越したことはない。そう、軽く見ていた。
ーー数日後
また、黒猫。ガラスの片目をこちらに向けて、
「にゃー!」
と、何かを忠告するように鳴いた。毛を逆立てて、茂みに消えて行く。
「…なんなんだよ…もう」
少し機嫌が悪くなるが、猫のことなど今はどうでもいい。朝から、何の音も聞こえないのが問題だ。誰の話し声も、イヤホンのお気に入りの…ジャズも聞こえない。人が歩く靴音も、
カバンのぶつかり合う音も、女子高生の話も。何も聞こえない電車の車内は、酷く落ち着かない。危うく、降り忘れる所だった。
(耳が聞こえないって、案外不便だ。不必要なことを聞かなくて済むと思ったのに。)
そう思いながらも、足は進んでいく。
ビルの屋上。見なれた街。フェンスの近くに行くと、猫が居た。あの、黒猫。
「にゃー」
哀れなものを見るような目で、鳴いた。
「……見るな…。見るな見るな。見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな!!!」
黒猫を追い払う。その目が、酷く、酷く癪に障る。
「……俺、か…?」
落ちていたガラスに映った自分の顔は、酷く痩けていて、隈も酷い。何日も寝ていないような顔。
足元を見る。そこには見慣れた街。あの駅、猫と出会った茂み前、会社。すべてが見える。
俺は今、落ちた。
「ああ………またか」
コメント
2件
いいですねぇ
第2話、読み終わりました……。黒猫がただの動物じゃなくて、主人公の心の変化を映す目撃者のようで、そこがすごく怖くて切なかったです。特に「ガラスの目に映る自分が歪んでいる」って一文が刺さりました。聴覚が失われていく感覚と、最後の「またか」という諦めに、胸がぎゅっとなりました。続きがすごく気になります……!