『初音ライダー剣』
第2話
“漆黒”
ミクが仮面ライダーブレイドとなった翌日、壊滅したBOARD支部の前では氷山キヨテルと唄音ウタ、MEIKO、そしてミクの4人がKAITOの墓前に立っていた。4人は目に薄っすらと涙を浮かべていた。
ミク「兄さん…」
ミクはKAITOの墓で泣きそうになった。しかし、それをMEIKOが止める。
MEIKO「ミク、いつまでも泣いてられないわよ。」
MEIKOはミクの左肩を優しく叩く。
ミク「姉さん…」
キヨテル「ずっと泣いていたらKAITOに申し開きが立ちませんよ。それよりこれからです。アンデッドとの戦いは続きます。その戦力がギャレンの適合者であるMEIKOと、ブレイドの適合者であるミクですから。」
ウタ「チーフの言う通りだよ。ミクはこれからブレイドとして、KAITOさんの代わりに戦うんだから!」
MEIKO「そういうことよ。よろしく頼むわね、2代目ブレイド。」
ミクは3人に背中を押された気分になり、胸が次第に高揚してきた。
ミク「…はい!」
4人は壊滅したBOARD支部を後にし、BOARDの宿舎に支部を仮設することにした。奇跡的にも無事だったアンデッドサーチャーと新型ライダーシステムの開発データベース、その他の備品をそこに集め、とりあえずはそこを拠点としてアンデッドと戦っていくこととした。
キヨテル「それじゃ、ミクとMEIKOは引き続きアンデッドの捜索と戦闘をお願いします。私とウタはバックアップをします。オペレーターはウタ1人になりますが。」
MEIKO「チーフは何を?」
キヨテル「私は本部に連絡を取ったり、調べものをしたり、新型ライダーや強化ツールの開発をしたりします。前線で戦うのはライダーたちに任せますよ。」
キョテルは自分の役目を伝えて、宿舎を後にした。その直後、アンデッドサーチャーに反応が反応し、大きな音を立てる。
ウタ「お、早速キャッチした!」
ミク「へ!?」
MEIKO「どこに!?」
ウタ「ここから南西20㎞です!」
MEIKO「よし!ミク、行くわよ!」
ミク「うん!」
MEIKOとミクは勇んでBOARDの宿舎を後にする。
とある街の公園では、1人の少女・歌愛ユキがサッカーボールで遊んでいた。ユキがボールを蹴ると、ボールは公園の端っこに飛んで行った。そして、ボールは一凛咲くマリーゴールドの花を踏みつけ、その場で微動だにして止まった。
ユキ「あ、いけない!」
ユキは急いでボールの側に駆け寄り、ボールをどけてボールの下敷きになったマリーゴールドを立て直した。その様子を、黒いライダースーツを着た女性・巡音ルカが見ていた。
ユキ「お姉ちゃん!」
ユキはルカを呼び、ルカにマリーゴールドの花を見せた。
ユキ「お姉ちゃん、この花知ってる?」
ルカ「マリーゴールドだな。キク科の花で、線虫の防除効果もある。」
ユキ「そうなの?何で?」
ルカ「マリーゴールドの花は根から独特の成分を出すんだ。それが線虫の防除に役立つ。」
ユキ「へー、お姉ちゃん、何でそんなの知ってるの?」
ルカ「長く生きた分、色んな知識がある。ま、趣味もあるがな。」
ルカは少し謙遜したようにユキに言う。
ユキ「そうなんだ。また教えてね、お姉ちゃん!」
ルカ「ああ。」
ユキは元気にルカに手を振り、引き続きボールを手に取って公園で遊ぶ。ルカはそんなユキを穏やかな目で見ている。しかし、その目はすぐに物憂げな感じに変わり、彼女はズボンの右ポケットから1枚のカードを取り出して眺めた。そのカードは左側に「SPIRIT」と書かれていて、中央には大きな♥と人間の男性の絵が描かれている。
ルカ「…」
ルカは「SPIRIT」と書かれたカードをしかめっ面で眺めた。このカードを手にしてから、何かと不思議な気分になる。何か、今までの自分にはなかったものが自分の中に入り込んでくる、そんな感じだ。それが何なのか、具体的には分からないが、敢えて例えるなら今、ルカはそれまで興味のなかったことに興味を持つようになった。その1つとして、草花等の生物についての知識や、人間に対する興味が出てきた。
ユキ「お姉ちゃん?」
ルカ「ん?」
ルカのしかめっ面をユキがのぞき込んできた。
ユキ「どしたの?何か小難しい表情(顔)して。」
ルカ「…いや、何でもない。少し考え事をしてたんだ…?」
ユキはルカを心配して言うが、ルカは軽く流す。そんな中、ルカは何かの気配を感じ取った。
ルカ「ごめん、ユキちゃん。急用ができた。夕方には帰ると思うから、先に帰りな。」
ユキ「へ?お姉ちゃん?」
ルカはユキに先に家に帰るよう促すと、自分は公園を出て、泊めてあるバイクの方へ向かう。その途中、ルカを襲う気配は痛みへと変わり、ルカの心臓を圧迫する。
ルカ「っ…」
ルカは胸を押さえながらも、愛車の元へ向かい、バイクにまたがり、ヘルメットをかぶってエンジンを入れる。
ルカ「この感じ…間違いない!」
ルカは痛みからくる直感を確信し、バイクのアクセルを踏み込んで公園を後にした。
その頃、ミクとMEIKOはアンデッドの出現場所を目指していた。ミクはブルースペイダー、MEIKOはレッドランバスに乗って急カーブの橋を渡っていた。目標とするアンデッドを追いかけていた。そして、山道の向こうの道でようやく目標を見つけた。
MEIKO「見つけた!ミク、いくわよ!」
ミク「うん!」
バイクを降りた2人は早速応戦体制に入る。MEIKOはギャレンバックル、ミクはブレイバックルを取り出し、腰に装着する。
MEIKO「変身!」 ミク「変身!」
「TURN UP」 「TURN UP」
2人はポーズを取った後、バックルの中央を回転させてオリハルコンエレメントを出現させる。そして、オリハルコンエレメントを潜ったMEIKOは仮面ライダーギャレンに、ミクは仮面ライダーブレイドに変身する。
ミク「はあああッ!」
ブレイドは勇んでブレイラウザーを抜刀し、鹿のアンデッド・ディアアンデッドに斬りかかる。しかし、ディアアンデッドは体を軽く反らしてブレイドの一撃を回避する。そして、その直後に左足でブレイドに蹴りを入れる。
ミク「うあっ!?」
ブレイドは軽く怯んだが、すぐに体制を立て直し、再びディアアンデッドに挑もうとする。しかし、ギャレンがブレイドの近くに寄り、ブレイドを制止する。
MEIKO「落ち着いて。1人で闇雲に挑んじゃダメよ。」
ミク「う…ごめん。」
ブレイドはギャレンの制止を受けて踏みとどまった。ディアアンデッドはその隙に連続ジャンプで崖を登っていた。
ミク「あんなところに!?」
距離を取られたブレイドは焦るが、ギャレンはそれも制止する。
MEIKO「だから落ち着いて。頭を使いましょう。」
ミク「どうするの?」
MEIKO「5のカードを使って。」
ミク「そうか!」
ブレイドはギャレンのアドバイスに従い、ブレイラウザーのオープントレイを開いて♠5のカードを取り出し、ブレイラウザーに読み込ませる。
「KICK」
ミク「よし!」
ブレイドは力の漲る両足で思いっきり地面を蹴って高くジャンプした。そして、そのジャンプで一気に崖の上に上がり、ディアアンデッドの上に付いた。程なくしてギャレンも崖を登り、上と下からディアアンデッドを挟み撃ちにした。
しかし、ディアアンデッドは怯まない。ディアアンデッドは頭の角に電気のエネルギーを溜め、左右の角から電撃を放出した。
ミク「うあっ!?」 MEIKO「何!?」
ブレイドとギャレンは電撃をくらって怯む。ディアアンデッドはその隙に高くジャンプして崖を登り切り、崖の頂上へと到着した。
ミク「…こんなので!」
MEIKO「…ミク!」
ブレイドは勇んで立ち上がってディアアンデッドを追う。ディアアンデッドは頂上から電撃を放ってブレイドの行く手を阻む。しかし、ブレイドは電撃を受けても怯まず前進し、ついに崖を登り切り、ディアアンデッドと対峙した。
ブレイドはブレイラウザーを抜刀し、ディアアンデッドに斬りかかる。ディアアンデッドは電撃を正面から放ってブレイドを攻撃するが、ブレイドはブレイラウザーをかざしてディアアンデッドの電撃を受け止める。
ミク「く…このっ!」
ブレイドは電撃の余波を浴びながらも怯まず前進し、ディアアンデッドに接近し、ブレイラウザーを振りかざしてディアアンデッドに斬撃をくらわせた。
ディアアンデッドはこの斬撃を正面から受けて倒れ転げ、崖の頂上から転げ落ちていった。そして、落ちた先にはギャレンが待ち構えていた。ギャレンはギャレンラウザーを連射し、ディアアンデッドを追い詰めていく。そこにブレイドも駆け付け、ディアアンデッドはまたしても挟み撃ちを受けることとなった。
ミク「もう逃がさない!」
ブレイドはブレイラウザーから♠2のカードを取り出し、ブレイラウザーにラウズする。
「SLASH」
ブレイドは強化されたブレイラウザーを持ってディアアンデッドに斬りかかり、強烈な斬撃を浴びせる。ディアアンデッドは斬撃をくらって大きくよろけた。その隙にギャレンはギャレンラウザーからカードを2枚選んで取り出す。
MEIKO「ミク、離れて!」
ギャレンはブレイドにディアアンデッドから離れるよう促し、ギャレンラウザーに2枚のカードをラウズする。
「DROP」
「FIRE」
♦5と♦6、2枚のカードのエネルギーがギャレンにオーバーラップされ、音声が鳴る。
「BURNING SMASH」
MEIKO「はあああっ!」
ギャレンは左腕に力を込めて握った後、高くジャンプし、空中で前転して両足に炎のエネルギーを纏い、ディアアンデッド目掛けてドロップキックを蹴り込む。ディアアンデッドはこれを受け、その場にドッと倒れ伏し、腰のアンデッドクレストを開いた。ブレイドはすかさずそこに空のラウズカードを投げ込み、ディアアンデッドを封印する。
ミク「…はあ…はあ…」
MEIKO「…やったわね。」
ウタ「いえ、もう1体います!」
ミク「へ!?」
ブレイドとギャレンが勝利の歓びに安堵をついているのも束の間、すぐにウタから通信が入り、2人の安堵の息を止めた。
MEIKO「どこにいるの?」
ウタ「そこの近くです!…ん、これは?」
ウタはアンデッドサーチャーに反応したものを訝しがった。
ミク「へ?何?」
ミク/ブレイドとMEIKO/ギャレンがディアアンデッドを追っていた頃、巡音ルカがバイクで山道の別ルートを走っていた。ルカは走行中、1枚のラウズカードを取り出した。カマキリと♥の絵が描かれたカードだ。同時に、ルカの腰にはベルト・カリスバックルが出現し、ルカは先取り出したカードをカリスバックルにラウズする。
ルカ「変身!」
「CHANGE」
ルカの姿がカマキリの仮面ライダー・カリスへと変身する。同時に、バイクもカリスの専用マシン・シャドーチェイサーへと変身した。ルカ/カリスは変身するとシャドーチェイサーのアクセルを強く入れ込み、アンデッドのいる場所へと向かう。
そして、カリスは山岳の池付近で巻貝のアンデッド・シェルアンデッドを見つけ、シャドーチェイサーから降りて臨戦態勢に入る。
ルカ「…」
カリスは無言でシェルアンデッドを睨む。そして、右腕に醒弓カリスアローを携え、シェルアンデッドに挑みかかる。シェルアンデッドは手裏剣を数枚飛ばしてカリスを牽制しようとするが、カリスはカリスアローを振るって手裏剣を弾く。しかし、手裏剣は囮に過ぎず、シェルアンデッドはカリスが手裏剣に池に逃げ込んでしまう。
ルカ「…ふん、チキンめ。」
カリスはシェルアンデッドを追うべく、池に入った。しかし、カリスが池で足が隠れたその時、シェルアンデッドがカリスの背後から襲いかかってきた。それこそがシェルアンデッドの狙っていた作戦だった。シェルアンデッドはカリスを自分の土俵に引き込むべく、水中に逃げたのだった。
ルカ「…ッ!」
油断していなかったカリスはシェルアンデッドの奇襲に素早く反応し、カリスアローのブレードでシェルアンデッドの右腕の突起を受け止める。そして、カリスは持前のパワーでカリスアローを振るってシェルアンデッドを弾き飛ばし、池の浅瀬で転倒させてしまう。シェルアンデッドは形勢を覆すべく、右に走って再び奇襲を仕掛けるべく、水中に逃げ込もうとする。しかし、カリスはそれをさせまいと、シェルアンデッドに素早く接近し、右腕でシェルアンデッドの体を掴んで、そのままシェルアンデッドを池の外へ放り投げた。シェルアンデッドは投げ飛ばされた場所でドッと倒れた。カリスはシェルアンデッドにとどめを刺すべく、カリスバックルの中央からカードリーダー・カリスラウザーを取り外し、カリスアローの中央にセットする。そしてさらに、カリスはカリスバックルの右部に装備されているカードデッキからラウズカードを2枚取り出し、カリスラウザーにラウズする。
「CHOP」
1枚目は「CHOP」。シュモクザメの絵が描かれたカードだ。
「TORNADE」
2枚目は「TORNADE」。鷹の絵が描かれたカードで、風のエネルギーを操る。
「SPINNING WAVE」
カリスはこの2枚のカードのエネルギーを使い、右腕にパワーを集中させる。そして、シェルアンデッド目掛けて突進していき、右腕を鎌鼬のような勢いで突き出してシェルアンデッドに食らわせた。シェルアンデッドは胴体中央の急所に手刀を受け、その場に倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。
ルカ「…この程度か。」
カリスは興ざめたようにシェルアンデッドのアンデッドクレストにラウズカードを落とし、シェルアンデッドを封印した。その様子を、駆け付けたブレイドが遠くから見ていた。
ミク「…」
ルカ「誰だ?」
ミク「あ!」
カリスはブレイドの存在に気づき、声を荒げる。ブレイドはカリスの前に姿を現し、カリスと対峙する。
ミク「あ、あなたは…誰?ライダーなの…?」
ルカ「…」