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mtk side
後日、三人で話す場が設けられた。
マネージャーも、専門家も介入し、
例の人物との関係は正式に遮断された。
僕は、震えながらも自分の言葉で話した。
過去のことも、不安なことも。
「決められるのが、怖い」
「でも、一人も怖い」
若井は一度も遮らなかった。
涼ちゃんは必要な時だけ補足した。
その場で、三人のルールが決まった。
僕の意思を最優先する
指示・命令は禁止
何かあれば必ず言葉にする
それは「Dom/Sub/Switch」という枠を
初めて超えた瞬間だった。
〜
活動再開は慎重だった。
だけど、ステージに立った瞬間、僕は気づいた。
若井は、前に出ない。
涼ちゃんは、後ろから支える。
誰も僕を引っ張らない。
歌い終えたあと、
客席の拍手が、怖くなかった。
“ 二人が居る “
それだけで、安心感があった。
楽屋で、涼ちゃんが言った。
「ちゃんと戻ってきたね」
若井も少しだけ微笑んだ。
僕はまだ完全ではない。
若井も、涼ちゃんも、きっと同じだ。
それでも、
「一緒に音楽をやる」という選択を、
僕たちは自分の意思で続けている。
それが、何よりの救いだった。
そしてこの日が、三人にとって
すごく大切な日になった気がした。
〜
mtk side
ある日、僕は自分から若井に近づいた。
ほんの一歩分だけ。
そして、目を合わせた。
「…ねぇ、若井。
若井から逃げないって、選んでみたい」
若井はすぐには応じなかった。
時間を置き、僕の目を見て、静かに言った。
「元貴が選んでくれるなら、それでいいよ」
涼ちゃんはその様子を見て、少し離れた。
そもそも、若井を避ける理由は
” Domだから “
というだけ。
若井自身に悪いところなんて一つも無い。
「今までごめんね、若井。
これからは、逃げたりしないから。
若井も離れていかないで。」
三人は、いつでも対等だった。
支配も、依存も、役割固定もない。
それでも、今までは
それぞれの孤独が独り立ちしていた。
「ずっとずっと、
若井が離れていきそうで、怖かった。
でも、どうしたらいいのかわからなかった。」
” 若井に助けられた “
その事実が、僕と若井を結ぶ近道になったんだ。
今はただ、 信頼だけがそこにある。
〜
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定期検診の日。
僕は今、最悪の選択肢を迫られている。
「大森さん、先日から伺っている件については
そろそろ考えていただけましたか?」
「…まだ、です。
まだ待ってください、」
それは、パートナーを作るということだ。
二度もサブドロップを経験したことがある僕には
パートナーが居ない。
本来ならばSubはDomのパートナーを作り
定期的にPlayをして正常を保つところを
僕はずっと薬を飲んで保っていた。
それについて、先生はずっと懸念している。
「何度も説明していますが、
パートナーが居ない状態での
大森さんの生活習慣を見ていると、
また悪意のあるDomに襲われてしまう
可能性が大いにあります。
しっかりとケアがされているSubと、
されていないSubとでは
纏う雰囲気が全く違うんです。」
つまりは、パートナーのいないSubは
Domから簡単に分かってしまう。
バレてしまうから、襲われやすい。
でも、
「だけど、、だからって!
どうやって僕にパートナーを作れ
って言うんですか。」
そういうと先生は
「若井さんに頼んでみませんか」
と、いつも言う。
だけど、それは絶対にしたくない。
” メンバーだから “というのもあるが
若井との関係を壊したくない。
壊すのが、怖い。
「…ケアは、涼ちゃんがしてくれます。
涼ちゃんじゃ、だめなんですか。」
「ダメです。Switchからのコマンドは
サブドロップを経験した貴方には弱すぎます。」
即答。
じゃあ、どうしろって言うんだよ。
僕にそんな勇気は無い。
「どうしても無理と言うなら
当院のDomに任せることになりますよ。
大森さんにとって
あまりいい話ではないと思うんですが。」
” 当院のDom “
それだけは、嫌だ。
知らない人に命令される恐怖は、
もう嫌という程味わってる。
少しずつ、呼吸が薄くなるのを感じる。
…あれ、息、吸えてる?
やだ、先生、たすけて。
息できないよ
「大森さん!!」
酸素マスクを付けられる。
気付けばまた、ベッドの上だった。
そして、隣には涼ちゃん
ではなく、若井が居た。
コメント
2件
わかいさぁぁぁぁぁぁぁん 更新ありがとうございます!続きも楽しみです