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水黒編 第三話 伸ばした手
アニキと初めに身体を交わし、どれほど月日が経ったのだろうか。そもそも初めて会ったのでさえかなり前なのだ、恋人がするようなデートだって今まで数え切れない程沢山してきた。
日が傾き夕暮れになりつつある今日という日に、僕はいつものようにアニキとデートする予定だった。今日のデート先は高級レストラン。最近は歌い手活動も順調に数字を伸ばしてきていので、今日は奮発してみた。昔なら彼女如きにソムリエが付いてたり給仕係がいるような高級レストランは奢るなんて考えられなかったが、アニキの為となれば数十万は簡単に出せた。
今の所、アニキとの関係はセフレなのかなんなのか阿呆な僕には分からないが、僕はこの関係を辞めようにも進展させるにもどちらも出来なかった。もちろん、せっかく掴んだアニキを手離したくないが、ずっとこの距離感だなんてもっと嫌だった。ヘタレな僕は、勇気を振り絞ってこのなんとも言えない関係を良い方に改善させるためのデートに誘った。
待ち合わせ場所は駅前高層ビルの近くにある噴水の所だった。今日はできるだけ無理している感じを演じないために控えめだが何処か色気のある服装で来た。いつもと違う香水を少し振りかけ、待ち合わせ場所まで向かった。
信号待ちをしながらスマホを見ていると、目の前を見慣れた靴を履いた男が通った。僕は慌てて目の前を通った男の姿を見ると、俺の愛している人だった。そう、アニキだったのだ。アニキは僕がプレゼントした靴を履いていたから分かった。僕はアニキを一目見ただけで汗が吹き出してきたのがわかった。もちろん、アニキがただ単に目の前を通るだけでそんなになるほど僕は腐ってはない。アニキの隣にいた人に僕は驚いたのだ。
隣で歩き、ニコニコの笑顔で話し掛けていて恋人繋ぎをしていたのは初兎さんだった。距離感は正に本当の恋人のようだった。僕は持っていたスマホをすぐポッケに終い、2人を追った。
僕が2人を尾行して、数十メートル程歩いた時2人は立ち止まった。少し離れた距離から見ていたし都会のド真ん中だったので会話はまったく聞こえなかったが、別れを惜しむような表情をしていた。もちろん、ここまでなら友達の距離感で納得出来るかもしれない。しかし、2人はそれだけでは止まらなかった。
彼らは少しも恥ずかしがらず、さも当たり前のようにキスをしたのだ。きっと今までそんな風のキスを交わしてきたのだろう。僕はそんな事実に泣きそうになったが、静かに涙を飲み込み、2人にバレないように集合場所まで走った。
いきなり走ってしまい息を上げながら、噴水に腰掛けていると、アニキが前から歩いてきた。ゼーハー息をしているダサい僕をすぐさま偽り、クールな男を演じた。
「よっ!ほとけ。今日は俺が遅刻しちゃったかな?ごめんな。」
「全然いいよ、アニキ!僕も今来たとこだし、、って早く行かないと!予約してた時間きちゃう!!」
「は!?そんな、時間ギリギリなん!?ちょ、はよ行くぞ!!」
アニキは今日、スーツを着ていた。アニキは元々一般的な男性より身長が低いが、それが目立たない程似合っている服装だった。ちょっと良いとこ行くから、お洒落してきてと言ったがここまでとは、、、僕はアニキのポテンシャルに驚きながら予約したレストランまで連れて行った。
「ん、エレベーター乗るからね?」
「ほぇ〜何階で降りんの?ボタン押すで」
「あ、じゃあ16階押して?今日、そこだから。」
「そ、そんな高いところ行くん!?」
アニキは驚いていたが僕にとってはそんぐらい当たり前だと思っていた。好きな人のためならばお金なんて関係ない。幸せになって欲しいんだ。さっき見たアニキの本性は忘れたフリをしてレストランの中に入った。
案内された席は丁度、夜の街の全貌が見えるような所だった。お月様やお星様が空の上にキラキラと輝いていて、それを見ていたアニキの瞳も綺麗に輝いていた気がした。
「アニキ、、?」
「ほとけ、?どしたん(笑)?」
キラキラと輝いていたアニキの瞳は僕を捉えた瞬間消えてしまった。光や影はひとつも写っていなかったが虚ろっている訳でもなかった。僕はそんな疑問を投げかけようとしたが、料理が運ばれて来たので無視する事にした。
料理自体はとても美味しく、僕もアニキもとても満足した。料理を食べながら飲んでいたのはスパークリングワインだった。薄い黄色のような綺麗な色のワインはとても美味しかった。アニキは行儀良くフォークやらナイフを使い、育ちの良さを実感できた。あまりにも僕には似つかわしく無いアニキの姿を見てしまい、先程の事もあり本当に僕の心はズタズタだった。
レストランの食事を楽しみ、時間も時間になったので僕達は外に出て、家に帰る事にした。因みにだがあの後何故かアニキはお酒が進み、シャンパンを3本も開けてしまった。元来アニキはお酒に強いはずだったが、かなりの量を飲んでいたので街を歩くアニキの足取りはおぼつかなかった。
「アニキ、、?家まで送ろっか、?いやガチで大丈夫そ(笑)?」
「ん”〜、ちょ、コーヒー飲み”たい。あっち行こ”、」
「ん、わかった。肩貸すよ」
そうやって僕はアニキの肩に腕を回し、近くの自販機がある路地に向かった。
アニキは路地の壁にもたれるように立っており、視線は定まっていなかった。いつもこんなになるほど酔うことはなかったので、僕は新鮮な気持ちになりながら、買ったコーヒーをあげた。ゴクゴクと喉元を震わせながらコーヒーを流し込みながらアニキは、ポッケに入ってあったタバコを取り出した。いつも僕がプレゼントしているタバコの銘柄とは違く、珍しいなと思いその事について疑問を投げ掛けるとさらに僕に追い討ちをかける返答が来た。
「ん〜、?あぁ、別に理由があるって訳ちゃうで、、味変的な??」
アニキは優しかった。僕がタバコの味を知りたくて手を伸ばした時は優しく拒まれてしまった。僕はきっと子供すぎるんだ、アニキの天使なのか悪魔なのかどちらか分からない優しさに心を痛めながら笑って過ごした。
僕が心の中で葛藤しているとアニキは自分のシャツのボタンをプチプチと外し始めた。急にどうしたのかという驚きと酒を飲んで熱を孕んだアニキのエロさに僕は動揺を隠しきれなかった。
きっとアニキにとって僕はタバコと一緒で味変感覚で色んな種類を楽しめる消耗品でしかないのだろう。僕は前者の動揺と後者の悔しさに理性の壁が破壊され、シャツをパタパタとさせ、誘っているようにしか見えないアニキの首元にかぶりついた。
「ん”ッ♡///ほと”けぇッ♡♡」
「悠佑ッ、♡スキッッ♡」
首元にキスマをつけた後も身体中のあちこちに僕だけのものという跡をつけた。頃合いを見て自分の手をアニキの硬くなったソレにあてがい、行為を始めた。アニキの拒まない優しさに僕は苦しみながらもその腐りきった気持ちを押し殺し、僕達は電灯がない月明かりだけの薄暗い路地でひとつになった。
こんな行為がどんなに無駄だと分かっていても辞めることなんて出来ない。じゃあもう、この現実を受け入れるしかない。そんな事を考えながら僕はアニキに対する思いを1番相応しい言葉にした。
「アニキ、ありがとう。」
次回白黒編
コメント
8件
ゔぁ゙...尊いの渋滞が沢山ですなぁ...。白黒か、愛してます。
へへっ、腐腐腐腐腐...好き... 尊い(◜¬◝ )○ぬ...あぁぁぁぁ、次回白黒...!楽しみ! 雲霧くん。ノベルは案外伸びるよ