テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#仮想現実
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜。
自分の部屋。
昼間と同じ部屋なのに、少しだけ静かすぎる。
机の上には、学園の資料。
分厚いパンフレット。
難しそうな文字。
「特例推薦」の文字がやけに目立つ。
「……規格外、かあ」
ベッドにごろんと倒れ込む。
天井を見つめる。
昼間はあんなに強気だったのに、今は少しだけ怖い。
手を、そっと持ち上げる。
「……出ないよね」
炎も、氷も、光も出ない。
当たり前みたいに、何も起こらない。
それが少し、ほっとして。
でも少し、寂しい。
目を閉じると、あの日の光景がよみがえる。
崩れる天井。
泣いていた少年。
冷たい感覚。
熱い衝動。
こぼれた光。
そして――
“もし、間違ってたら?”
あの炎が、誰かを傷つけていたら。
あの氷が、誰かを閉じ込めていたら。
考えた瞬間、胸がぎゅっと締まる。
「……やだな」
ぽつりと漏れる。
「私のせいで誰かが傷つくの」
怖い。
でも。
「……私のせいで、助けられないのも嫌」
天井に向かって、小さく笑う。
「わがままだなあ、私」
守りたい。
でも、普通でいたい。
強くなりたい。
でも、怖い。
ぐるぐると回る気持ち。
陽葵は起き上がると、窓を開けた。
夜風が、ひんやり頬をなでる。
指先が少し冷える。
その瞬間――
窓枠に、薄く霜が張った。
「……え?」
驚いて手を引く。
霜はすぐに消えた。
でも確かに、そこにあった。
無意識。
感情に反応している。
「ちゃんと……向き合わないとダメ、か」
静かな決意が、胸の奥で灯る。
小さな火のように。
「……行ってみよっかな」
不安は消えない。
でも逃げたくない。
守りたいと思ったあの気持ちは、嘘じゃないから。
夜空を見上げる。
「ねえ」
誰にともなく、呟く。
「私、ちゃんと強くなれるかな」
答えはない。
でも、朝は来る。
再生の朝が。