テラーノベル
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翌朝。
「おはよー!」
いつも通りのテンションで教室に入る。
でも、心臓はちょっと早い。
「陽葵! もう大丈夫なの? 三日も休んでたじゃん!」
駆け寄ってきたのは、親友の 美桜(みお)。
小柄でしっかり者。陽葵のブレーキ役だ。
「うん、まあ! ほぼ充電完了!」
「ほぼってなに」
いつものやり取り。
でも今日は、違う。
陽葵は少しだけ声を落とした。
「ねえ、放課後さ……ちょっと時間ある?」
美桜が首をかしげる。
「あるけど? なに、改まって」
「……大事な話」
その言い方に、美桜の表情が変わる。
放課後、屋上。
フェンス越しに見える街。
あの日、煙が上がっていた方向も見える。
「で?」
腕を組んで待つ美桜。
陽葵は深呼吸する。
「私さ」
一瞬、迷う。
でも。
「能力、あるらしい」
「……は?」
「しかも三つ」
「は????」
美桜の声が裏返る。
「火と氷と治癒だって」
「待って情報量多い」
「私もそう思う!」
一瞬、沈黙。
風が吹く。
美桜がじっと陽葵を見る。
「……それ、本当?」
「うん。あの事故の日、出た。勝手に」
少しだけ、笑う。
「かっこよくない? 私、トリプル持ちだよ?」
冗談っぽく言う。
でも。
美桜は笑わなかった。
「陽葵」
まっすぐな目。
「怖くないの?」
その一言で、胸が詰まる。
「……ちょっとは」
正直に言う。
「でもさ、助けられたんだよ? なら良くない?」
「良くない」
即答。
「倒れたんでしょ。三日」
「まあ、うん」
「それでまた同じことしたら?」
言葉に詰まる。
「陽葵、自分のこと軽く見すぎ」
「見てないよ!」
「見てる」
きっぱり。
「陽葵がいなくなったら、私が困る」
その言葉に、目が見開く。
「……え」
「ヒーロー気取りでも何でもいいけどさ」
少し声が震える。
「自分のこと、ちゃんと大事にしてよ」
胸の奥が、じんわり熱くなる。
炎じゃない。
もっと柔らかい熱。
「……ずるいなあ、みお」
「なにが」
「そんなこと言われたらさ」
少し笑う。
「ちゃんと強くなりたくなるじゃん」
美桜はため息をつく。
「で? 学園とか行くの?」
「……たぶん」
「そっか」
短い返事。
でも。
「応援はする」
「え」
「でも無茶したら殴る」
「怖っ」
笑い合う。
でも確実に、何かが変わった。
陽葵は思う。
(ひとりじゃない)
それだけで、少しだけ強くなれた気がした。
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