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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第53話 〚崩壊の合図〛(恒一視点)
昼休みの終わり。
廊下の奥で、りあがこちらに向かってくるのが見えた。
その歩き方は——
いつもの、計算された可愛さを纏ったものじゃない。
(……違う)
「恒一」
名前を呼ばれただけで、胸の奥がざわついた。
「話がある」
人の少ない階段横。
りあは一度息を吸ってから、はっきり言った。
「……もう、やめる」
「は?」
言葉の意味が、すぐに理解できなかった。
「海翔のこと、奪うのも」
「澪を困らせるのも」
「全部」
一瞬、頭が真っ白になる。
「何言ってんだよ」
「今さら——」
「利用されてたの、気づいたから」
その一言で、空気が変わった。
「私、ぶりっ子も辞めた」
「誰かを踏み台にしないと居場所がないなんて、もう嫌」
りあの目は、揺れていなかった。
以前のような、迷いも、期待もない。
「澪は……悪くなかった」
——その名前が出た瞬間、
胸の奥で、何かが音を立てて崩れた。
「全部、君の計画だったんでしょ」
否定できなかった。
りあは少しだけ悲しそうに笑った。
「だから、協力もしない」
「もう、終わり」
そう言い残して、りあは去っていった。
取り残されたのは、俺だけ。
(……終わり?)
そんなはず、なかった。
りあを使えば、
海翔を引き離して、
澪を孤立させて——
完璧だったはずの筋書き。
(なのに)
りあはもう、ぶりっ子をしない。
海翔に近づこうともしない。
澪を貶める役割は、消えた。
「……クソ」
壁に拳を当てそうになって、やめた。
計画は、確実に崩れている。
一つずつ、音を立てて。
(でも、終わらない)
りあが抜けただけだ。
まだ、方法はある。
視線の先に、教室のドア。
その向こうにいるのは——澪。
(次は、俺が動く)
そう思った瞬間、
胸の奥で、今までにない焦りが広がっていた。
——歯車は、
思い通りには、もう回らない。