コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
──私と一緒に旅に出て欲しいって 私は彼が好きだった。
一緒に居たいと思った。
私は彼と、ずっと一緒に居るつもりだった。
けれど、それは叶わなかった。彼は突然、姿を消した。
私の前から、忽然と姿を消してしまったのだ。
私は彼を探した。
彼を見つけ出して、もう一度会いたかったから。
彼の事を、知りたくて仕方がなかったから。
彼の事が好きで好きで、大好きで。
だから私は、彼の後を追いかけて追いかけて追い掛け回して。
ようやく掴まえる事ができたんだ。
「私ね、ずっと君に会いたかったんだよ」
彼が消えた時、私は涙を流すことができなかった
泣きじゃくる妹を見ても、どうして泣いているのか理解できなかった。
ただ、胸の奥が痛くて苦しかった。これはなんだろう。この痛みは一体、何だろう。
それが恋だと気付くまで、時間はかからなかった。
私は彼を好きになったのだ。
彼のことが好きなのだから、私は泣かなければならない。
「お兄ちゃん」
私の呼び掛けに彼は振り向かない。
私を見ようともしない。
彼が見ているのは、私の隣にいる女性だ。
彼女は彼と腕を組んで、幸せそうに笑っている。
私のことなどまるで見えていないかのように。
それなのに、なぜ私はこんなにも惨めな気持ちになるのだろう。
「お兄ちゃん、こっち見てよ」
もう一度、彼を呼んでみる。
しかしやはり、彼の視線はこちらに向けられることはなかった。
もういっそのこと、彼に思い切り殴られてしまいたい。
それで全部おわりにしてしまえるのならば