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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第26話 〚揺れる決意〛(澪視点)
胸の奥が、まだじくじくと痛んでいる。
呼吸をするたびに、その場所を思い出させるように。
予知を見たあとの感覚。
あれはもう、ただの「未来の映像」じゃない。
私の中に、確実に残ってしまうもの。
(……私は、どうしたいんだろう)
考えようとすると、視界が少し滲む。
怖いからじゃない。
答えが、簡単じゃないから。
私は今、守られている。
海翔がいて。
玲央がいて。
えま、しおり、みさとがいて。
先生たちまで、私を中心に動いている。
誰かが前に立ち、
誰かが周囲を見張り、
誰かが声を上げてくれる。
それは、ありがたい。
本当に、ありがたい。
でも——
その輪の真ん中にいる私は、何をしている?
予知を見るだけ。
危険を知るだけ。
そして、誰かが動くのを待つだけ。
(それで、いいの?)
自分に問いかけた瞬間、
胸が、きゅっと縮んだ。
「澪」
名前を呼ばれて、顔を上げる。
すぐ隣に、海翔がいた。
さっきまで何も言わずにいたのに、
今は、私の表情を確かめるように見ている。
「……大丈夫?」
その一言が、優しすぎて。
胸が、別の意味で痛くなった。
(この人を、これ以上巻き込みたくない)
そう思うのに、
もう、十分すぎるほど巻き込んでいる。
予知は、止まらない。
見たくなくても、見えてしまう。
逃げようとしても、未来は追いかけてくる。
だったら。
私は、どうする?
このまま守られるだけ?
何も言わず、何も決めず、
「怖い」を理由に、全部を任せる?
それとも。
ほんの一瞬、
胸の奥が、ずきりと痛んだ。
その痛みは、
これまでとは違う。
警告みたいで、
でも同時に、背中を押すような感覚。
(……考えるのを、やめるな)
そう言われている気がした。
未来を知っているなら。
危険が見えるなら。
私は——
それを、どう使う?
机の下で、そっと手を握りしめる。
指先が、少し震えていた。
怖い。
迷っている。
まだ、答えは出ていない。
それでも。
「何もしない」という選択だけは、
もう、選びたくなかった。
私は、
ただ守られるだけの存在じゃない。
そう在りたいと、
初めて、強く思った。
澪の中で、
小さく、でも確かな決意が芽生え始める。
それはまだ、言葉にならない。
誰にも見えない。
けれど——
確実に、未来を変えるための一歩だった。