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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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だけど春の足音が聞こえはじめる二月、加那太の部屋を訪れたときに違和感を感じた。
この日はいつもと違って部屋の中が片付いていたのだ。
――誰か来た? ううん、そんなわけない。
「なんか……部屋が綺麗じゃない?」
「え……ああ……冴実にばかり掃除を頼むのは悪いから、少しは自分でやろうと思って」
その言葉を聞いて私は素直にうれしかった。加那太が私を思いやり、招き入れる前に部屋を掃除しておいてくれたのだから。
「今日はお天気が悪いから洗濯するのは無理だけど、来週は掃除も洗濯も私がやるね。任せて!」
「いや、いい。来週は金曜から実家に帰るんだ」
「そうなのね……」
じゃあ来週末は会えないのか、と寂しさを感じながらリビングのソファーに腰を下ろした。
今までだって必ず土日に会えていたわけじゃないし大丈夫、と心の中で自分自身をなぐさめる。タイミングが合わないことだってあるもの。
「だったら平日でもいいからそれまでに会おうよ」
「卒論もあるし、時間が取れないな」
加那太に即答され、私はガクリと肩を落とした。
なんだかふたりのあいだの空気が一気に悪くなった気がした。
私はそれが嫌で、懸命に顔に笑みを貼り付けて平静を装う。
「じゃあ、差し入れでも持ってこようか。少しだけでも会いたいから私が努力する!」
「努力?」
「うん。この先もずっと一緒にいるためにね」
立ったまま話していた加那太がラグの上にあぐらをかいて座り、しばし黙り込んだ。
私の顔を一向に見ようとしない彼の態度に徐々に不安が膨らんでいく。
「ずっとって、どういう意味? 俺と結婚でもしたいのか?」
今度は反対に私が言葉を詰まらせて沈黙が流れる。
加那太の口から“結婚”というワードが出たものの、彼がひどく渋い表情をしていたのがショックだった。
「そんなのまだわからないけど、何年か経ったらいずれは考えるかも」
「俺が家でだらしないのは知ってるだろ? 就職先が決まってるとはいえ、給料だって高くないし結婚なんて無理だ」
「別に今決めなくてもいいじゃない」
加那太と付き合ってから、彼がこれほどイライラするのは見たことがない。
キュッと眉間にシワを寄せ、今にも大声を出しそうで恐怖すら覚えた。
恋人に会えるとウキウキした気持ちでやって来たのに、すぐに喧嘩になるなんて最悪だ。
「今日は帰るね」
このまま話していても彼は頭に血が上る一方で、良い方向に向かう気がしない。
お互いに一旦落ち着く時間が必要だから、私はこの部屋にいないほうがいいのだ。
ソファーから立ち上がって玄関先で靴を履いていても、加那太は無言のままこちらを見ようともしなかった。
交際を続けるには努力が必要で、遠回しに加那太にはそれが足りないと受け取れる発言をした私に対して、彼は怒っているのだろう。
「またね」
加那太に声をかけ、私は玄関を開けて外に出た。
バタンと扉が閉まった途端、悲しい気持ちが込み上げてきて、目の縁にじわじわと涙が溜まってくる。
そのあと家に帰ってからもずっと加那太との会話が頭から離れなかったが、落ち着けと自分自身に言い聞かせて深呼吸をした。
加那太も私もまだ大学を卒業していない中で、いきなり将来の話になって彼は戸惑っただけかもしれない。
時間を置いたら、この先冷静に話せる日もやってくると思う。そんなふうに考えるのはポジティブすぎるだろうか。
その日を境にメッセージのやり取りは途絶えていたが、加那太から翌週の木曜日に連絡がきた。夜にレストランで食事をしないかと誘われたのだ。
家が大好きな加那太が外で食事したいだなんて珍しい。彼なりに前回会ったときの喧嘩を気にしているのだと思う。
私が了承の返事をすると、彼はメッセージで待ち合わせの場所を知らせてきたのだけれど、なぜか行ったことのないカジュアルなフレンチレストランだった。
ホームページで確認してみたら、ナチュラルな木の色のテーブルが配置されていて温かみのあるオシャレな内装のお店だ。
コメント
1件
ちょっと待ってそれ……!😭💔 加那太が急に部屋を片付けてたの、絶対「誰か来た」ってやつじゃん……読んでて胃がキューってなった。結婚の話になったときのあの空気、冴実が笑顔を貼り付けてるところが痛いほど伝わってきて泣ける……。でも最後に珍しく外食誘ってきたのは、まだ修復の可能性あるって信じたいよ!次のエピソードでどうなるか気になりすぎるんだけど……!🌸💕