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アルノスに導かれ、エリオスは村を後にした。
夜の闇が二人を包み込み、足元の道は次第に見慣れない風景へと変わっていく。
森を抜け、丘を越え、二人は言葉少なに進んでいった。
「アルノスさん、どこへ向かっているのですか?」
沈黙に耐えきれず、エリオスは問いかけた。
「セクタールへ向かっている。星の力を操る科学の都市だ」
「セクタール…?」
彼は胸の鼓動が再び早まるのを感じた。
「なぜ僕をそこへ?」
「お前自身が知るべきだからだ。世界の真実を、そしてお前の役割を」
道中、アルノスは少しずつ世界の成り立ちを語り始めた。
「この世界は、科学と魔法、二つの力によって支えられている。しかし、その均衡が崩れ始めている。星々のエネルギーを過剰に利用する者たちが現れ、魔法の世界との境界が薄れつつある」
「それが、世界の崩壊につながると?」
「その通りだ。二つの力が衝突すれば、世界は耐えきれずに崩壊する。それを防ぐためには、境界を安定させる必要がある」
「でも、なぜ僕が?」
アルノスは立ち止まり、エリオスの目を真っ直ぐに見つめた。
「お前は特別な存在だ。科学の力と魔法の力、両方に適性を持つ者は稀だ。そして、その力を引き出す鍵が、お前の手にしているその欠片だ」
エリオスはポケットの中の金属片を握りしめた。冷たい感触が手のひらに伝わる。
「この欠片が…?」
「それは『境界石』と呼ばれるもの。二つの世界を繋ぐ力を持つ。しかし、それを正しく使える者は限られている」
エリオスは自分の運命の重さに戸惑いを隠せなかった。
しかし、同時に自分が何か大きな使命を持っていることに、わずかな誇りと覚悟も芽生えていた。
夜が明け始め、空が薄明るく染まっていく。
遠くに巨大な都市のシルエットが浮かび上がった。
高くそびえる塔や無数の建物が連なり、その全てが金属の輝きを放っている。
「あれが、セクタール…」
エリオスは息を呑んだ。やはりどこかで見たことがある光景だ。
アルノスは静かに頷いた。
「さあ、行こう。時間はない」