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「……ねむ」
ソファにだらっとしながら、キヨが呟く。
「寝すぎだろ」
キッチンからうっしーの声。
「眠気も増すの」
「ふーんそんな寝れんだな」
「いいじゃん別に」
適当な返し。
でも、その空気がもう完全に“日常”になってた。
⸻
「はい」
目の前にコップが置かれる。
「……ありがと」
受け取って、そのまま一口飲む。
「……うっしーさ」
「ん?」
「普通に世話焼きすぎじゃない?」
「今さら?」
「今さら」
少し笑う。
「だってキヨ放っとくとなんもしないじゃん」
「するし」
「してない」
「してる」
「してない」
軽い言い合い。
でも。
「……まあ、いいけど」
キヨが小さく言う。
「なにが」
「世話焼かれるの」
「……」
「嫌じゃないし」
ぽつりと。
その言葉に、うっしーが少しだけ黙る。
⸻
「……ねえ」
キヨが、少しだけ体を起こす。
「なに」
「こっち来て」
またそれ。
最近増えたやつ。
「……はいはい」
隣に座る。
「もうちょい」
「また?」
「いいから」
ぐいっと腕を引く。
距離が、一気に近くなる。
「……近いって」
「いいの」
即答。
そしてそのまま——
肩に頭を預ける。
「……キヨ」
「んー」
「重い」
「うるさい」
でも、どかない。
むしろ少しだけ寄る。
「……ほんと慣れたな」
うっしーが小さく言う。
「なにが」
「こういうの」
「……」
少しだけ考えて、
「……慣れた」
素直に認める。
「だってさ」
目を閉じたまま、
「ここが一番楽」
「……」
その言葉に、うっしーの手が一瞬止まる。
でも、何も言わない。
⸻
「……うっしー」
「ん」
「どっか行かないよな」
また、それ。
最近増えた確認。
「行かないって」
「ほんとに?」
「ほんと」
「……ならいい」
それで安心したみたいに、少し力が抜ける。
⸻
——ピロン
そのとき、スマホの通知音。
「……」
キヨの体が、少しだけ固まる。
「見ないの」
うっしーが聞く。
「……いい」
そう言いながらも、気になってるのがバレバレ。
「見ろよ」
「……やだ」
「なんで」
「……嫌な予感」
「じゃあなおさら見ろ」
「……」
渋々、スマホを手に取る。
画面を見る。
そして——
「……」
一気に表情が変わる。
「どうした」
「……あいつ」
声が低くなる。
「元カレ?」
「うん」
画面を見せる。
そこには、
『やっぱちゃんと話したい』
『この前はごめん』
『お前のこと考えた』
「……」
うっしーの空気が、少し変わる。
「……しつこ」
ぽつりと。
「……なに今さら」
キヨが、イラついた声で言う。
でも。
指が、少し止まってる。
「……返すの?」
うっしーが聞く。
「……」
少しの沈黙。
「……返さない」
そう言いながらも、
完全に割り切れてないのがわかる。
⸻
「……キヨ」
「なに」
「まだ引っかかってる?」
「……」
図星すぎて、何も言えない。
「……別に」
無理やり否定する。
「ただムカつくだけ」
「ほんとに?」
「……ほんと」
でも。
自分でもわかってる。
完全に終わってない感情が、少しだけ残ってる。
⸻
そのとき。
——ピロン
また通知。
『会いたい』
『ちゃんと話させて』
「……っ」
キヨが、スマホを強く握る。
「……しつこすぎ」
「ブロックする?」
「……」
迷う。
少しだけ。
その“迷い”を見て、
「キヨ」
うっしーが、少しだけ低い声で呼ぶ。
「……なに」
「会いたいの?」
「……は?」
思わず顔を上げる。
「会いたいなら止めない」
「……」
「でも」
少しだけ間を置いて、
「中途半端に行くなら、やめた方がいい」
はっきり言う。
「……なんで」
「また同じことになるから」
静かな声。
でも、重い。
「……」
キヨは、言葉に詰まる。
⸻
「……俺さ」
少しして、キヨが口を開く。
「ん」
「正直、わかんない」
「うん」
「もう無理だと思ってるけど」
「うん」
「……でも、ちゃんと終わらせたほうがいい気もする」
正直な気持ち。
逃げたくない。
でも、怖い。
「……」
うっしーは少しだけ考えて、
「じゃあさ」
「ん」
「今度はちゃんと終わらせに行けば」
「……」
「戻るためじゃなくて」
その言葉に、キヨの目が少しだけ開く。
「……終わらせるため」
小さく繰り返す。
「そう」
「……」
少しだけ、考える。
でも。
「……一人は無理」
ぽつりと。
「知ってる」
即答。
「今回も行く」
「……うん」
それだけで、十分だった。
⸻
「……ねえ」
キヨが、小さく呼ぶ。
「ん?」
「もしさ」
少しだけ声が揺れる。
「俺、ちょっとでもあっち戻りそうになったら」
「……」
「止めて」
その言葉に、
一瞬、空気が止まる。
でも。
「…..任せろ」
うっしーは、はっきり言った。
――
その夜。
キヨは、いつもより少し強くうっしーにくっついた。
まるで──
離れないようにするみたいに。
――
そして。
次に会うとき。
“本当に終わるかどうか”が決まる。
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