テラーノベル
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部屋の照明を背中に受けて、キスの合間に見下ろしてくるナオミの顔は影になっている。
それが妙に色っぽさを増長させているようで、羞恥心が余計に煽られる。なんとなく居た堪れないような気持になって体を僅かに引いた瞬間、足に振れたナオミの質量にぎょっとして顔を向けると、ガウンの合わせから覗くソレに目が釘付けになった。
ガウンの隙間、薄暗い影の中で不遜なほどに反り上がり、熱く脈打つそれは、女性の美学を追求していたナオミのイメージを完膚なきまでに破壊する、剥き出しの雄の象徴。
それなりに知識も経験もあるつもりだった。けれど、目の前にあるそれは、今まで見てきたどの男性のものとも違って見える。
「やぁねぇ。そんなにジロジロと見ないで頂戴。恥ずかしいじゃない」
ふわりと耳朶を揺らしたのは、先ほどまでの低いテノールではなく、BARで見せるあの軽やかな作り込んだソプラノだった。
けれど、視界にある現実はその声音とはあまりにもかけ離れていて、穂乃果の脳内はパニックを起こす。
「す、すすすっ、すみませんっ!」
謝るべきなのか、目を逸らすべきなのか。混乱の極致にある穂乃果は、跳ね起きた勢いでベッドの隅へと後退しようとした。
だが、その動きはナオミの逞しい腕によって瞬時に阻まれる。
「……なぁんて。嘘に決まってるじゃない」
再び耳元で響いたのは、脳髄を直接震わせるような、深く、艶やかな地声。
ナオミは逃げようとする穂乃果の腰をぐいと引き寄せると、そのまま彼女を仰向けに組み伏せた。
「アタシをこんな風に熱くさせられるのは、アンタだけよ……」
上から見下ろすナオミの琥珀色の瞳は、もう笑っていない。
影に落ちた彼の素顔は、整っているからこそ余計に男としての凄みを際立たせ、穂乃果を射抜く。
「ひ……っ、あ……」
太ももに押し当てられた熱い質量が、ドクドクと脈打つたびに、穂乃果の身体に強烈な異性の感覚が刻み込まれていく。
知識として知っているものとも、直樹との虚しい夜に触れたものとも違う。
目の前にあるのは、自分を支配し、甘く蕩かそうとする、圧倒的な個としての熱量。
ベッドサイドのぼんやりとした間接照明だけが灯る薄闇の中。ナオミの琥珀色の瞳が、まるで捕食者のように穂乃果をじっと見下ろしていた。
「……嫌?」
耳元で囁かれる甘い誘惑。
ナオミの声はまるで蜜のように耳から脳へと流れ込み、強固だったはずの自制心をぐずぐずに溶かしていく。
その問い掛けに答える暇さえ与えず、彼の大きな手がするりとバスローブの隙間から滑り込んできた。同時に、熱い唇が首筋の窪みに落ちる。
ちゅ、と小さく音を立てて吸い付かれ、指先が腰のくびれをゆっくりとなぞるだけで、ぞくりとした甘美な戦慄が背筋を駆け上がった。
「や……っ、あっ……!」
「ふふ。そんなに震えて……可愛い」
ナオミは喉の奥で笑い、首筋に熱い唇を這わせた。その刺激が新たな波となり、穂乃果の意識をさらっていく。
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あや