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寮に向かう道を歩いていると、同じ方向に向かう人を何人か見つけた。住宅街には約106件ぐらいの天創学園の寮が立っていて、住宅街の中央の大通りからどんどんと道が左右に分かれて寮が立っている。寮の種類も色々あって白や黒の色とりどりな寮。和風な寮。西洋チックな寮などたくさんの寮が建っている。このことから寮の住宅街は「虹色の街」とも呼ばれているらしい。この寮がどれもとてつもなく充実しているため、天創学園の寮は人気で、これ目当てに入学する人も多いんだとか。そんな事を考えているうちに何人かいた生徒もいつの間にか俺一人になってしまった。先程までいた生徒達も左右の道に入っていってしまったため、大通りには遅くきた俺だけになってしまったというわけだ。で、肝心の俺の寮だが…なんと俺の寮は大通りの一番奥にある、めちゃくちゃ豪華な寮なのである!ラッキーだぜ!
入学初日から嫌な事もあったけど…そんなことなんて吹っ飛ぶくらいの豪邸だ! 寮の前には薔薇が彫刻された門があって、広い庭もある!
おまけに洋室も和室もあって、超絶広い!しかも自分の部屋まである!神か!?!?
浮かれつつもすたすたと大通りの奥まで歩いて行った。
(番号、番号っと。よし!ここだな。)
プリントに示された番号を確認して、先程言った薔薇の彫刻の刻まれた門を潜った。広い庭を歩いて玄関の前まで来るとそこには4人の人影が見えた。
(なんか見覚えがある奴がいるなぁ。)
そう思いつつ、どんなルームメイトなのかドキドキしながら扉の前まで進んだ。
すると、莉愛と譜凛夏。そして見知らぬ二人の男が立っていた。
「裕翔じゃん!裕翔も同じ寮だったんだ!嬉しいな〜。私と同じクラスで同じ寮。運がいいですねー!てことで改めてよろしく♪」
「裕翔くん!私達幼馴染3人の絆はマリアナ海溝より深いのだよ!家事とかできないから私のも助けてね!よろしくなのだー!」
「よろしくな。で、譜凛夏!自分のことは自分でやりやがれ!」
「無理だよー!死んじゃうー!」
俺が着くと莉愛と譜凛夏は嬉しそうに騒いでいた。まぁ幼馴染3人でまたいっしょにいられるんだもんな…
(そういえば天創学園では生徒達が家事をすべて寮のメンバーでやるって言ってたな。洗濯機とかオーブンとかも全部寮にあるらしい。)
家事は俺も苦手なんだよな…そうだ!誰かに押し付けよう!うん!そうしよう!
「…あの!」
そんな家事を押し付ける作戦…じゃなかった。家事をうまくやるプランを考えている中今度は明るく元気な男の子が話しかけてきた。
「こんにちは!はじめまして。えっと…裕翔さんでしたっけ?」
「あ、はじめまして。夜星裕翔です。」
「僕は、『栗山李灯』(くりやまりとう)です!よろしくな!」
栗山李灯…なんか強そうだな。こんな俺でもただならぬ気配を感じる。
「李灯か…よろしくな。俺のことは裕翔って呼んでくれ。これから同じ寮なんだ。タメ口で構わないぞ。」
「おぉ!じゃあ裕翔って呼ばせてもらうわ!俺もタメ口で大丈夫だ!改めてよろしくな!」
李灯は明るくて、なんというか熱血的で、友情とか大事にしそうだなと言うのが俺からの第1印象だった。
そんな明るい笑顔の李灯の後ろから、少し顔を出した気弱そうな少年がこちらを覗いてきた。
気弱そうな少年は李灯に話しかけている。
「李灯‥…この人今日有名になってた人だ。」
(ギクッ!)
「あぁ。そういえば裕翔ってあの叶璃に反抗した奴か。でも強いやつにきっぱりと意見を言えるのはすごいと俺は思うぜ!」
流石にもうみんな知ってたんだな… もう立ち直ってきたのにまた心の傷をえぐられてしまった。そんな俺の表情を察して、譜凛夏が大笑いしながら俺の背中をバンバン叩いてきた。結構痛いぞ?!これ!!
(でも李灯は俺の姿勢を褒めてくれたんだ。俺は間違ったことはしてないし、恥ずかしがることはない!)
俺は立ち直ったところで李灯の後ろの少年に話しかける。
「はじめまして。今日から同じ寮に住む夜星裕翔だ。よろしくな!君の名前は?」
「…『識派雨下』(しきはうか)…雨下って呼んで…」
「雨下か。よろしくな!」
これからこんな個性豊かな人たちと三年間暮らすのか。楽しみだなぁ。どうなるんだろうな?
莉愛は料理うまそうだし…譜凛夏は会話盛り上げてくれそうだな。でも起こすの大変だからなあいつ。李灯は嫌なことがあっても励ましてくれそうだし、雨下は色んなことを教えてくれそうだな。
「さっさと中に入ろよぉ…李灯。」
横でこくこくと雨下の意見に頷く俺。
(俺も中が気になるし、先に入ろうかな…?)
と、そこで李灯が衝撃の発言をしてきた。
「待てよ。叶璃がまだ来てねぇぞ。」
‥おい待て、叶璃って言ったか?こいつ。おい待て待て待て!!!!
俺はすかさず確認に入る。
「なぁ…李灯。」
「なんだよ裕翔。どうしたんだ?そんな汗かいて。」
「叶璃ってここの寮なの?」
「あぁ。そうだよ。」
ふーん…なるほーど。終わったぁ。叶璃と同じ寮(3年間)はきつい!!!
「どうしよう。終わった俺。」
「何が終わったんだい?裕翔さん。」
(?!?!?!?!?!)
すると後ろから今日の朝、喧嘩した声と全く似てる声が耳元から聞こえてきた。びっくりした俺は前に走って逃げたあと後ろを振り返った。
そこで李灯が会話にはいってきて叶璃と楽しげに会話しだした。
「よぉ、叶璃。久しぶりだな。」
「李灯じゃないか。これからもよろしく。」
(え、何2人知り合いなん?怖いんだけど)
俺が怯えていると、「裕翔さん。そんな怯えないでよ。俺たちは同じクラスで同じ寮住み。だから仲良くしよう?」と優しげに言ってきた。怖い!!!!さっきとは雰囲気がめっちゃ違った。
「あの時の雰囲気はなんだよ。叶璃さんよぉ…」
そんなことを言うと莉愛が「みんなそろったことだし、そろそろ中に入って見ましょう。」と言った。俺達は寮へと入り、期待と不安寮生活が始まった。これから3年間どうなることやら…