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ある日の休日、秦城と会って学校近くの川沿いを二人で歩いた。土曜か日曜か忘れたけど、まだ涼しい空気に満ちた午前だった。
「秦城はもう希望校決めたんだっけ?」
「ん? ……一応」
彼はジュースを飲みながら、受験する学校を教えてくれた。成績が良い彼は第一から第三希望まで、予想どおりの難関校だった。
もちろん応援してるけど、……ちょっとだけ、彼と同じ高校に入りたいと思った。
でも学力が並んでも無理だ。秦城が受けるのは全て私立。ウチは貧乏だから絶対に親が許してくれない。
彼とは中学で別れる。それが寂しいな。初めて大切だって思えたのに。
俯きながらジュースのパッケージを見ていると、背中を強く叩かれた。
「受験とかだるいよなぁ。しかも卒業したら、お前と離れるし、良いことないよ。……卒業なんてしたくない」
ずっとこのままでいい。中学三年生のまま、この学校に残っていたい。
そう言った彼に目を奪われた。
わかるよ、俺も。そんな言葉が頭に浮かんで、同意しようとした。
離れたくない、とか。
卒業してもたまに会おう、とか。他にたくさん伝えるべき言葉があったはず。だけどこのとき、口からは別の言葉が出てしまった。この先ずっと後悔することになった、あの言葉が。
「俺、秦城のことが好きだ」
せめて黙ってればよかった。
薄情だと思われても幻滅されるよりはマシだ。
この関係にひびが入るよりは、ずっとマシだったじゃないか……。
彼の驚いた顔を見て自分を呪いたくなった。
あと数ヶ月、大人しくしていれば。きっと無事に卒業できて、何年先も彼と笑っていられたのに。
「気持ちわるい」と言った彼の返事は考えなくても分かったこと。
むしろここは「冗談だよ」、「驚かせてごめん!」と笑って言うべきだ。
そう思うのに口からは何も出ない。
代わりに、大粒の涙が目から溢れた。
「あ……。永月……?」
勝手に自爆した。傷ついて泣いてる自分が恥ずかしいし、腹立たしい。同情を買ってるのかと思われ、さらに幻滅されてしまう。
秦城の戸惑った顔を見てさらに困惑した。
「ごめん……っ」
これ以上泣き顔を見られたくなくて、無我夢中で走った。
自爆した自分が憎いのか。
本より大事に想っていた彼に拒絶されたことが辛いのか。自分の気持ちが分からないけど、もうどうでもいい。……消えてしまいたい。