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アマラ「それじゃあ報酬を…」
アリィ「あれいいの?私たち結局寝てただけの気が…」
アマラ「アンタ達の記憶には無いかもしれないが、アタシの中ではお前達にかなり頑張ってもらっていたんだ。労働分はきっちり払うさ。」
ジーク「あ、そうだ。それ聞きたかったんだ。」
アマラ「どれだ?」
ジーク「魔法が効かなかった理由。俺は心当たりがある。でもルスベスタンと、アマラはなんでか分からなくて…。ノアが言うにはある道具を使ったらしいが…。」
ノア「その首飾り…そうだよね?」
ノアはそう言い、アマラの首に掛けられた首飾りを指で指す。
アマラ「合ってるぜ。これはカシラが持ってけって言って渡されたんだ。…何が起きるのか全部知ってたのかもな。」
アリィ「…不審に思ったりしないの?」
アマラ「しないさ。」
アマラは断言する。
アマラ「廃人になりかけていたアタシを、仲間に入れてくれた。だから、信じても疑いはしないさ。この首飾りは、ある種族が残した失われた技術だ。魔法を弾くおまじないのような物だ。ただ…ルスベスタンに渡した覚えはないな。 」
ジーク「……。」
アマラ「…本当なら調査すべきなんだが、これはアタシの手に負える問題じゃない。カシラに頼むよ。」
ノア「その羽も今正しい使い方が出来てないよね?」
ノアは今度はアマラの腰に飾られた赤い羽根を指で指す。
アマラ「ああ、本当は通信機なんだが…」
ノア「貸して。ボクが見る限りだと、ただの動力切れだよ。魔力を注げば大丈夫。」
アマラ「『羊』から聞いたが、かなりギリギリなんだろ?なら補充してもらう訳には…」
ノア「ジハードがボクに魔力を分けてくれたおかげで、余裕があるんだ。大丈夫。どうしても不安なら…」
ノアはアリィの方に目をやる。
アリィ「え、私?」
ノア「…今回教えるから見てて。」
そう言い、アマラからノアは羽を受け取る。
アリィ「見てるけど…」
ノア「こういう道具には核があって…あったここ。」
ノアはそう言い、羽と骨の間にある小さな丸い物体を指で指す。
ノア「景観を損なわいように、分かりにくなってるけど、多分これなはず。ここに指をあてて…魔法を使う時と同じ感覚でやるんだ。でもイメージは糸かな。細くほそーくして入れていくんだ。じゃないと溢れて壊れる可能性があるから。…フェニックスは元々各地に散らばって活動してる。それが出来たのはこれのおかげなんだ。通信機能が使えなくなって、今ではただフェニックスを象徴するだけの物になってしまったけれど…よかったらこの先フェニックスのヒトが居たら…」
アリィ「分かった。」
ノア「はいできた。」
ノアはそう言い、アマラに羽を返す。
アマラ「ま、アタシだけ使えても送ることしか出来ないな。この分だと。でも死にかけた時とか便利だ。助かった、ありがとう。」
ジーク「悪魔の文明なのか?それ。」
ノア「…半分正解、半分不正解。ちゃんと説明する。自分のことも含めて。でも今は、報酬を貰う方が先だと思う。」
ジーク「分かった。」
アマラ「んーまぁ大体こんなものか。ほい。」
アリィ「きっ、金貨!?」
アマラ「当たり前だろ。国家機密レベルの物に手を出すのを手伝ってもらったんだから。あとこれは橋を渡る様の代金。 」
ジーク「追加分!?」
アマラ「アンタ達、元々あの橋が渡りたかったんだろ?」
ノア「そうだけど…」
アマラ「フェニックスでのアタシの役割は、あくまで表舞台の代表役と、情報収集だ。戦いじゃない。見くびらないでくれよ?ノアは…」
ノア「ボクはやりたいことを勝手にやっただけ。だから要らないよ。 」
アマラ「分かった。」
アリィ「…折角だから貰っておいた方が…」
ジーク「アリィ。それはやめた方がいい。それがまかり通れば、見ず知らずの奴から知らない請求が来るぞ。」
アリィ「あ、そっか…ごめん。」
アマラ「気にしないでいい。これからどうするんだ?」
アリィ「橋を渡ってから、暫く道なりに。えーと1番近い国は?」
ジーク「トスク国だ。そこに行く。」
(追っ手は撒いたと思うし、暫くは余裕があるだろう。)
アリィ「私、背中に大怪我してるから…この場所の環境だと風邪を引く可能性が高いから、ゆっくり行くんだって。」
アマラ「へ〜。アンタが決めてるのか。」
ジーク「ああ。…少し世間知らずなとこがあるから…なるべく教えてはいるけど…」
そう言い、ジークはアリィに目を向ける。
アマラ「…でもこのままだと多分行けないぞ。」
ジーク&ノア&アリィ「え?」
アマラ「ほら、橋の監視人のルスベスタンが今…」
アリィ「そうじゃん!居ないじゃん!?」
ジーク「行方不明事件なんてクソ長くなりそうだが…」
ノア「気長に待つしかないね…。」
アマラ「出鼻をくじかれたな」
そう言い、アマラはケタケタと笑う。
ジーク「これ以上あの宿に泊まるのは嫌だぞ…? 」
アリィ「恒陽国なら安かったり…」
アマラ「そんなことは無いぞ!」
アリィ「ぐぅっ…!!」
アマラ「まー…これは本当に問題だし、ちょっとアタシが話してくる。あんまり使いすぎると、『羊』に怒られるからな…。大怪我してるんだし、ゆっくり休んどけ。」
ノア「…ジーク暇って耐えられる?」
ジーク「あんまりそれは耐えるのは苦手だな…。」
ノア「そんな気はしてた。じゃあ…宿屋に戻ったら…」
ノアはきっとジーク達に自分のことを話したいのだろう。ジークはその意図を汲み頷く。
アマラ「それじゃあまたな〜。」
アリィ「またね〜。」
アマラ(多分今の状態ならあの2人の実力なら、抜け出せるだろうが…まぁ1人怪我してるんだ。そんな無謀なことはしないか。とりあえず…)
アマラ「何仕事してんだ…早く帰ってこい…!ルスベスタン…!!」
アマラはアリィ達と離れたあと、国から出ていくという話を聞き、かなり焦っていた。
アマラ「とはいえ…アタシも事後処理が残ってるんだよな…。1部は『羊』に手伝ってもらって…あ、ダメだ。『狼牙』にバレたんだった…。次やったらアイツの刀の錆にされる…。というかお土産渡すくらいしないと…何もしなくても錆にされちまう…。」
(悪いとは思ってたんだけど…仕事が完璧なんだもんな…。今度あったら謝ろう。 )
アリィ「さっきぶりの宿屋だ〜、ふぅ。 」
アリィはベッドに思い切りダイブする。
ノア「あ、アリィ。あの…」
アリィ「ん〜?そういえば、大事な話があるんだったよね。 」
ノア「あ、あれ?ボク言ったっけ?」
アリィ「ううん。ジークから少しだけ聞いたんだ。…ポルポルなんでしょ?」
ノア「……。」
ジーク「ごめん。本当は、自分から伝えたいかとは思ったんだが…なんで居るのかってしつこくて… 」
アリィ「だってえ〜。」
ノア「…そ、その怒ってないの?」
アリィ「ん?怒ってるよ。」
ノア「だよね…騙して…」
アリィ「今、私の怒ってる理由を間違えたせいで、私は更に怒ってるよ。 」
ノア「…え…?」
アリィ「私が怒ってる理由は、別にノアとポルポルが同一人物なことを黙ってたことじゃない。だって見た目が変わっただけでしょ?」
ジーク「アリィは変なところで肝が据わってるよな…。」
アリィ「私が怒ってるのはね、ノア。約束を破ったこと!」
ノア「あ……」
アリィ「私お留守番しててって言ったよね。…あのね、これでも長いこと一緒に居たんだよ。イリアじゃないけど…言葉が通じなくたって…本調子じゃなかったことくらい分かるの。だからお留守番しててって言ったのに…。ジークから、宿屋の外に居たって聞いて…私は…心配したんだよ? 」
ノア「…ごめんなさい。」
アリィ「次からは無茶しないで。どうしてもって言うなら…頼って。」
ノア「…うん。」
ジーク「それはお前もだけどな。」
ジークはそう言い、アリィの額にデコピンをする。
アリィ「あいでっ!そうだね…これに関しては1番言う権利があるのは、ジークに間違いないや…。」
ジーク「チームで活動するのは慣れてるから。
これからゆっくり慣れていけばいい。」
ジークはそう言い、立ち上がり座っていたアリィとノアの頭を撫でる。
ジーク「俺が知ってるのは、ポルポルとノアが同一人物で、何らかの理由で今まで喋れなかったことだけだ。自分のこと、話してくれるか?ノア。」
ノア「うん。…ジークの言う通り、今まで喋りたくても、喋れなかったのは本当。いつも2人がポルポルって呼んでくれるあの姿。あれは…極力余計なことを省いた、最低限の生命維持活動をする為の姿なんだ。冬眠状態に近いかな…。だから対して考える頭もないし、あまり覚えてもいられない。」
アリィ「喋れなかったのもそれなんだね。でもなんでそんなことを?」
ノア「悪魔にとって、魔力は生命力なんだ。…魔法は文字通り命を削って使ってるものなんだ。」
ノアがそう言い終えると、ジークはノアの肩を掴み揺さぶる。
ジーク「…なんであの時言わなかったんだ!?俺が覗いてくれって言ったからか…!?」
ノア「だ、大丈夫だから…ぐえぇ…。」
アリィ「ジーク、焦る気持ちは分かるけど落ち着いて。本人が大丈夫って言ってるんだし、話を最後まで聞こう。」
ジーク「あ、ああ悪い。」
ノア「心配してくれてありがとう。…本当に大丈夫。アリィにとって魔力って何?」
アリィ「え、私?…私にとっては満腹感かな。満腹だと、多く魔法を使えて…でも空腹だと全然魔法が使えないから。」
ノア「ご飯を食べたら?」
アリィ「また魔法が使えるよ。」
ノア「そう。アリィが言ったように、生命力の回復方法はある。ただ、ボクら悪魔には消化器官がない。食べる為の機能が備わってないんだ。 」
ジーク「…そんなことあるのか?だって悪魔は…」
ノア「ヒトや植物、何かを食べる。」
ジーク「ああ。」
ノア「それに関しては後で説明する。とにかく食事では無いけど…独特の回復方法があるから大丈夫。ジハードのおかげで本当に余裕があるから…。 」
ジーク「…信じるぞ。」
ノア「うん。魔力が無くなれば、悪魔は死ぬ。たまにある突然死はそういうこと。それで…ボクはある事がきっかけで…生命維持も難しい程魔力が減っちゃったんだ。…いや。殺されかけてたんだ。それで最後の力を振り絞って、ポルポルを生み出した。あとはあまり覚えていないけど…とにかく逃げた。逃げて…でもボロボロになって…実はアリィに初めて会った時…生死の境をさ迷ってたんだ。アリィに会って…凄い魔力を持ってるのに気づいて…実はこっそり少しだけ貰ってたんだ。それで回復してた。でもやっぱり体積分魔力は持ってかれて…だからずっとポルポルの姿だったんだ。 」
ジーク「…い、今まで死にかけてたってことか…?」
ノア「大体その認識で合ってるよ。アリィ、ごめん。」
アリィ「いやそれはいいんだけど…も、もっと貰ってもいいよ…?そんなギリギリなら…」
ノア「それはダメ!そんなことしたらアリィが死んじゃう。」
アリィ「ま、まぁ本人がそう言うなら…別に小腹が空く程度だし、問題ないよ。全然遠慮しないでいいから。」
ノア「ありがとう…。」
ジーク「…気付かなくて悪かった。」
ノア「そんなこと!」
ジーク「凄い魔力って言ってたけど…個体差があるのか?」
ノア「うん、魔力は生命力とは言ったけど、正確には、魔法を使うための動力に必要な魔力を生命力から、変換してるんだ。アリィは、そのエネルギーの変換率がかなり良いんだ。ちょっとの満腹感から多くの魔力をつくれる。」
アリィ「何となくで今まで使ってたね…。」
ジーク「な。」
アリィ「簡単にまとめるとあれだね!ポルポルはずぅーっとお腹が空いていたんだね。」
ノア「そんなとこ。言えなくてごめん。」
アリィ「別に大丈夫!あと本当に全然貰っていいからね…?」
ジーク「まぁこんなこと言われたら心配だよな。体調が悪くなったりすれば、言えよ。」
ノア「……。」
ジーク「ノア?」
ノア「まだ仲間だと思ってくれてるの…?」
アリィ「何当たり前のこと言ってるの?」
ノア「だ、だってボク、アリィから魔力を…」
ジーク「必要に駆られてやったんだろ。見捨てたりしないよ。今まで自分なりの方法で、俺達を守ってくれてただろ?」
ノア「…それはアリィに死なれたら…」
アリィ「でもジークは違うよ。ノア、無理に悪い人ぶらなくていいよ。」
そう言い、アリィはノアを抱きしめる。
アリィ「私達は貴方のことを、全部知ってるわけじゃない。でも私も殺されかけたことがあるから、これだけは言える。怖かったんだよね。大丈夫、私達は貴方が怖がるものじゃない。貴方の優しさを知ってる。これはただの口だけのものじゃなくて、本当だよ。荷物を全部置いていけって絡んできた男の人達に、会って間もないのに、自分のことのように怒ってくれたこと。イニディア村で、全力を注いでアカネ君に協力して、守ったこと。イリア達と泊まったあの村で、定期的にこっそり私の様子を見に来てくれたこと。貴方は覚えていないこともあるかもしれない。でも、私達は貴方の優しさを覚えてるよ。 だから大丈夫。離れていかないよ。 」
アリィはノアを強く抱きしめ、頭を撫で語りかける。ノアは抱き返した。その瞳に涙が溜まっているのが、分かった。やがてそれは決壊したように、零れ落ち続けた。
アリィ「疲れてたんだね。」
ジーク「自責の念に苛まれ続けてたんだろうな。」
ジークは子供のように、泣き疲れて寝ているノアに宿の毛布を掛け、答える。
ジーク「ベッドは2人分しかないし、余分に一部屋取らなきゃな。」
アリィ「そうだね。」
ジーク「どこであんなこと覚えたんだ?」
アリィ「全部、今までジークがしてくれた事だよ。」
ジーク「…俺はちゃんとお前の救いになれてるか?」
アリィ「私はきっとジークが居てくれなかったら、こんな明るく生きてこられなかった。だから、なってるよ。」
ジーク「そうか。本当は聞きたいことはもっとある。でも、これから聞いていけばいいよな。」
アリィ「うん。私1部屋追加できないか聞いてみるよ。起きてればだけど。」
ジーク「よろしく。 」
アリィがガチャリと扉を開け、部屋を出ていく。
ジークはノアの髪を撫で、独り言を呟く。
ジーク「…どうしようも無いお人好しなのを、俺も知っているよ。ありがとう。テオスを…じいちゃんを連れ出してくれて。 」