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Scene 07:プロのクリエーターは、彼女の沈黙を待っている
DMを送ってから 、
彼女からの返信が来ないことが気になった。
既読はついている。
でも返事はない。
「……怖がらせたかな」
そう思いながらも、
なぜか気になって仕方がない。
あの絵の“優しさ”が、
今も頭から離れない。
Scene 08:彼女は悩む
返信しようか、
やめようか。
「ありがとうございます」
その一言すら、
送る勇気が出ない。
だって私は普通だし、
才能なんてないし、
ただ好きな人を思って描いただけだし。
でも──
胸の奥が、少しだけ温かい。
景兎先輩の優しさを思い出したときと同じ温度。
Scene 09:そして、彼女は小さく動く
深呼吸して、
震える指で文字を打つ。
「見てくださってありがとうございます。
上手くないですが、描くのは好きです。」
送信。
たったそれだけ。
でも、
彼女にとっては大きな一歩。
この瞬間、
静かに、確実に、
Scene 10:まさか──“有名クリエーター”は、あの先輩だった
私は震える指で、
クリエーターのプロフィール写真を見つめた。
切長のアーモンド型の瞳。
ふんわりしたトップの髪。
落ち着いた笑顔。
黒いジャケット。
似ている。
でも、景兎先輩はあの職場を辞めて、
どこに行ったのか誰も知らなかった。
──まさか。
胸がざわつく。
「仕事を辞めて、別の世界で生きていた」
そう考えると、すべてが自然に繋がった。
Scene 11:言葉の癖が、完全に一致していた
DMの文章を読み返す。
「無理に上手く描こうとしなくていいですよ。
そのままで、十分伝わります。」
その言い方。
その温度。
その“押しつけない優しさ”。
以前の職場で、ミスをして落ち込んでいた私に景兎先輩がよく言っていた言葉と同じだった。
「そのままでいいよ。
大丈夫だから。」
胸がぎゅっとなる。
偶然じゃない。
似ているだけじゃない。
同じ人だ。
Scene 12:彼女は気づいてしまう
景兎先輩は、あの職場での仕事に疲れていたのかもしれない。
もっと自分の好きなことをしたかったのかもしれない。
そして、静かに辞めて、静かに別の道へ進んだ。
その姿が、今の景兎先輩──
有名クリエーターとしての景兎先輩。
小さく呟く。
「……景兎先輩、だったんだ」
Scene 13:そして、彼女は返信する
震える手で、ゆっくりと文字を打つ。
「あなたの言葉、
どこか懐かしいです。」
送信。
その瞬間、世界は静かに反転した。