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Scene 14:彼は再び忙しくなる
DMのやり取りは数回だけ続いた。
どれも短くて、丁寧で、優しい。
でも、ある日を境に景兎先輩からの返信が途切れた。
既読はつく。
でも返事はない。
私は気にしないようにした。
有名クリエーターなら忙しいのは当たり前。
むしろ、返信が来ていたことの方が不思議だった。
それでも、
胸の奥が少しだけ寂しくなる。
Scene 15:彼は仕事に追われていた
その頃、僕は本当に忙しかった。
企業案件。
キャラデザインの締切。
イベントの準備。
SNSの更新。
ファンからのメッセージ。
そして、新しい仕事の依頼が舞い込む。
「コンテストの審査員をお願いできませんか」
僕は迷わず引き受けた。
若い人の作品を見るのは好きだったし、
自分が救われたように、
誰かの“最初の一歩”を支えたいと思った。
Scene 16:告知が出る──彼女は偶然それを見る
ある夜、私はSNSを開いた。
流れてきたのは、イラストコンテストの告知。
審査員の名前を見た瞬間、心臓が跳ねた。
───景兎先輩の有名クリエーターとしての名前だった。
以前の職場の先輩。
今は有名クリエーターとして活動している。
DMでやり取りした有名クリエーター。
私は画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。
Scene 17:応募するか迷う
「応募しても、どうせ選ばれない」
「私なんて普通だし」
「上手くないし」
そんな言葉が頭に浮かぶ。
でも、景兎先輩の言葉も思い出す。
「そのままで、十分伝わります」
あの優しい言葉。
あの温度。
景兎先輩の声と同じ響き。
胸の奥が静かに温かくなる。
Scene 18:彼女は応募を決める
私は深呼吸して、描きかけのイラストを開いた。
それは、以前の職場の景兎先輩を思い出しながら描いたキャラの続き。
優しい目。
落ち着いた雰囲気。
ふんわりした髪。
あの日の記憶が滲んだ線。
「……出してみよう」
震える手で、応募フォームに作品を添付する。
送信ボタンを押した瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
でも、その奥に小さな光が灯る。
Scene 19:彼はまだ知らない
僕はコンテストの準備に追われていた。
応募が来るのを待ちながら、ふとスマホを見る。
彼女からのDMはない。
でも、なぜか気になってしまう。
「あの子、元気にしてるかな」
僕はまだ知らなかった。
彼女が、自分の審査するコンテストに応募したことを。
そして、その作品が
僕の人生をもう一度変える一枚になることを。