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夜の公園。街灯の下に、高梨はひとり立っていた。 スーツはしわだらけで、目の下には深い隈。十年来の相棒の姿が、別人のように見えた。
「来てくれたか……城戸」
「家族を人質に取られてたんだな」
「……ああ。断れば娘が殺される。どうしろってんだよ」
拳銃を向けようとして、俺はやめた。
今の高梨は敵でもあり、味方でもある。
「USBの中身は見た。黒幕は副総監の北条だ」
そう告げると、高梨の肩が震えた。
「やっぱり……そうか」
「知っていたのか?」
「断片的にはな。佐藤が何か掴んでるって聞いてた。でも、俺は……怖くて動けなかった」
高梨は顔を覆い、震える声で続けた。
「俺の家族を助けてくれ。何でもする。裏切ったことは……あとでどうとでも裁け」
そのとき、公園の暗がりから神代が現れた。
「なら、交渉の材料は揃ったな」
「……どういう意味だ?」俺は問い詰める。
「北条にとって、一番危険なのは“警察内部の証言”だ。高梨、お前が内情を暴露する証人になれ」
「俺が……?」高梨は青ざめる。
「その代わり、家族は俺が必ず取り戻す」神代の声は低く、だが確信に満ちていた。
俺は二人を交互に見た。
相棒を信じるか、それとも切り捨てるか――答えは決まっていた。
「高梨。もう一度、俺の相棒に戻れ。命を賭けても、家族は俺たちで救う」
高梨は唇を噛み、そして小さく頷いた。
その瞬間、背後の林から無数のライトが点った。
複数の懐中電灯がこちらを照らし、銃声が夜を裂いた。
「……もう嗅ぎつけられたか」神代が舌打ちする。
「倉庫に向かう前に、消されるぞ!」
俺たちは同時に拳銃を抜いた。
相棒との再会は、すぐさま銃火に包まれた。